今回は、関西電力の電気料金値上げについて取り上げます。
関西電力は、2023年は4月と10月に値上げを行いましたが、他の電力会社が一斉に値上げを実施した2023年6月には値上げを行いませんでした。
関西電力の電気料金が値上げされた理由、値上げを実施しなかった理由、関西電力の他社との違い、さらに2024年に料金値上げが行われるのか等について解説します。
関西電力の2023年の料金値上げの経緯
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関西電力では2023年にどのような料金値上げが実施されたのでしょうか。関西電力の2023年の料金値上げを順を追ってチェックします。
2023年4月の値上げ
関西電力では、2023年4月1日以降、すべての料金プランで値上げを実施しました。
値上げの主な理由は「託送料金」の上昇で、各プランの値上げ幅・値上げ額は以下の通りです。
区分 |
値上げ幅 |
値上げ額 |
従量電灯A |
1.55% |
93円 |
従量電灯B |
0.74% |
230円 |
低圧電力 |
1.19% |
173円 |
はぴeタイムR |
1.47% |
204円 |
はぴeタイムR |
1.59% |
240円 |
時間帯別電灯 |
2.20% |
233円 |
eおとくプラン |
1.12% |
93円 |
なっトクでんき |
1.59% |
92円 |
値上げ幅は最大でも2.20%、値上げ額で240円と比較的小幅な値上げとなりました。
【託送料金とは】
一般家庭やオフィス、向上などに電気を送る際、小売電気事業者が利用する送配電網の利用料金のことで、簡単に言うと電気の「送料」のようなものです。値上げした分の料金は再生可能エネルギーの導入拡大による送配電網の投資や設備の更新などに充てられることになっています。
託送料金は、電力会社が送配電会社に支払う料金であるため、利用者側からは見えづらいですが、家庭向け電気料金の3割~4割程度を占める大きなコストです。 2023年4月からは、託送料金のレベニューキャップ制度が導入されたことにより、各電力会社が設定する託送料金が値上げされました。
託送料金が上昇する要因は以下の通りです。
(1)電力需要の減少
ここ数年、新型コロナの感染拡大の影響によって電気使用量が減少し、必然的に送配電網を通る電力量も減少していることや、省エネルギーや、太陽光発電などの自家発電世帯の増加も送配電網を通る電力の量が減少する要因となっています。
(2)コストの増大
昨今、わが国ではエネルギー安全保障の側面からも再生可能エネルギーによる発電が急拡大していますが、大規模太陽光発電所(メガソーラー)や洋上風力発電所などは電力の需要の多い地域(都市部)から離れた場所に設置されることが多いため、送電線の増設や長距離送電が必要となりコストが増大します。さらに、老朽化した送電設備の刷新や送電線の地中化など、設備更新のための費用も増加傾向にあります。
(3)制度の変更
2023年4月から「レベニューキャップ」制度が導入されました。「レベニューキャップ」制度では、送配電事業者が柔軟に託送料金を設定することが可能になったことから、継続的に発生していた赤字を解消することができるようになりましたが、反面、そのコストは電気料金に上乗せされる形で利用者が負担することになります。
2023年6月の値上げ
各地の大手電力10社のうち、東京電力エナジーパートナーをはじめ電力7社は2023年6月1日から家庭向けなどの電気料金(規制料金)の値上げを実施しました。
値上げは、大きく分けて以下のような理由によるものです。
・世界的な化石燃料の高騰
ウクライナとロシアの問題など地政学的リスクや、中東地域の政情の不安定さ、コロナ禍や半導体不足による物流の滞りなど、様々な要因によって世界的にエネルギーコストが急上昇していること。さらに、円安の影響もあって燃料調達に想定以上のコストがかかっています。
・原子力発電所の稼働率の減少に伴う電力の低減
東日本大震災等の影響による原子力発電所の運転停止や廃炉などの影響で、国内の発電量自体が減少している中、再生可能エネルギーによる発電の導入拡大が重量課題ですが、インフラ整備や送電網の拡充などのコストが増大しています。さらに電力を送るための託送料金も上昇しています。
・再エネ賦課金の値上がり
FIT制度によって電力会社に再生可能エネルギーによって発電された電力が買い取られる際、買取価格よりも売却価格の方が安いのでその差額を再エネ賦課金で埋めているため、固定価格買取制度で買い取られる再エネ発電の電力量が増えれば増えるほど再エネ賦課金額も増やさざるを得ません。
この値上げは、先に各電力会社から申請されていた値上げ申請が経済産業省によって認可されたもので、各電力会社の値上げ幅は以下の通りです。
・北海道電力…20.6%
・東北電力…23.6%
・東京電力エナジーパートナー…14.4%
・北陸電力…42.3%
・中国電力…29.2%
・四国電力…25.1%
・沖縄電力…37.8%
実はこの中に、含まれていない電力会社が3社あります。
・中部電力ミライズ
・関西電力
・四国電力
このように関西電力は、2023年6月に値上げを行わなかったうちの1社です。
2023年10月の値上げ
燃料費の高騰を受けて政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による補助金が半減したため、利用者が負担する料金が値上がりとなりました。
2023年1月~8月の補助金額が月額1,820円だったのに対し、2023年9月~2024年4月には月額910円となっています。補助金が半減したため、その分の料金が値上げされた形です。
関西電力の他社とは違う特徴
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2023年6月の料金値上げを実施しなかった関西電力にはどのような特徴があるのでしょうか。なぜ値上げを行わずに済ませることができたのか、その理由を検証してみましょう。
原子力発電の比率が高いため化石燃料への依存が少ない
関西電力は他の電力会社に比べ、原子力発電の比率が高く、その分、火力発電への依存が少ない電力会社です。
大手電力会社10社全体では火力発電が7割以上を占めるのに対して、関西電力の火力発電は45%ほどです。原子力発電の比率は20%を超えます。
この原子力発電が占める割合の大きさこそ、関西電力の大きな特徴で、そのぶん輸入に頼る化石燃料を購入するためのコストが少ないことになります。
前項で、2023年6月の電力各社の値上げの理由の1つに、化石燃料の高騰が挙げられていましたが、関西電力は火力発電の比率が小さいため、化石燃料購入のコスト分を料金に反映しなくて済んだ…というのが、値上げを実施しなかった理由というわけです。
関西電力は2024年に料金値上げを実施する?
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関西電力が2024年に値上げをするかどうかは、関西電力から正式な発表があるまでわかりませんが、いくつかの電気料金値上げ要因が認められます。
エネルギー価格の高止まり
コロナ語の経済活動の活発化により、世界中でエネルギーの使用量が増加しており、それに伴って化石燃料全体の価格上昇が続いています。
しかしOPEC(石油輸出国機構)にロシアを加えたOPEC+は、石油を増産する意向を示していない事から、エネルギー価格は高止まりしたままとなりそうです。
また中国によるLNG輸入の急増や、ロシアが国内への供給を優先していることなどで、LNGの供給不足が加速しています。
託送料金の上昇
送配電網の老朽化による更新・刷新や、遠隔地への送配電網の拡大など、今後も託送料金は値上がりを続けると見られます。
また政府が進める再生可能エネルギー発電の拡大は、長い距離を送電する必要があり、その分、託送料金が余計にかかるという側面もあります。さらに、送配電網のデジタル化のための投資も増加しています。
政府補助金の縮小
2023年1月から始まった政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による補助金は、2023年1月~8月の月額1,820円から、2023年9月~2024年4月の月額910円に半減しましたが、2024年5月以降は月額468円とさらに減少することが決まっています。
こうしたことを考え合わせると、2024年も電気料金が値下げされる可能性は低いと思わざるを得ませんが、場合によっては現状維持さえ難しくなり、値上げが実施される可能性も考えられます。
しかし関西電力は原子力発電の比率が大きいことから、もし値上げが実施される場合でも、他社より値上げ幅は小さい可能性も否定できません。
手軽な電力自給のすすめ
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電気料金の値上げの可能性が否定できない以上、何らかの自衛対策を講じる必要があります。
省エネ家電への切換えや、設定温度を見直すなど家電の使い方などは有効な節電対策ですが、「電力の自給」もおすすめの自衛手段と言えます。
電力の自給は、自宅で発電をすることで、電力会社から購入する電気を減らすことで節電に効果があります。ソーラーパネルなどで発電した電力を蓄電池に貯めておき、好きな時に好きな場所で使用することで、電気料金を抑制することが可能です。
例えば、1日に2kWの電気を発電して家庭内で使用した場合、月間で60kWの電力を購入せずに済む計算になります。関西電力(従量電灯A・使用量300kW以下)の場合、60kWの料金は60kw×25.71円=1,302.6円に相当します。年間では15,631円もの節約になります。
大掛かりな太陽光発電システムを導入するには多額のコストがかかりますし、集合住宅では導入できない場合が多いので、そうした場合には、ポータブル電源とソーラーパネルのセットで、庭やベランダでの発電・蓄電で充分対策可能です。
ポータブル電源なら、災害時の停電時の電力確保や、アウトドアで使用できるメリットがあります。以下のおすすめポータブル電源とソーラーパネルもチェックしてみてください。
関西電力値上げまとめ
今回は、関西電力の2023年の料金値上げの推移を確認しました。
関西電力は他の電力会社に比べて、原子力発電の比率が多いという特徴を持っているため、2023年6月の一斉値上げは行いませんでした。
とは言え、様々な値上げ要因があり、2024年も値上げしないとは言い切れません。化石燃料の購入が他社より少なくて済む分、万が一、値上げされる場合でも小規模であって欲しいものです。