フェーズフリーとは？日常の延長で備える新しい防災の考え方

「フェーズフリー」とは、平常時と非常時の境界をなくし、いつもの暮らしの延長で“もしも”にも備える発想です。日本の災害リスクに向き合いながら、日常から無理なく続けられる備えを、暮らしの質（QOL）を下げずに整えます。—読者メリット：今日からできる“使いながら備える”実践法と、家電や電源の上手な選び方が分かります。

「備えない防災」が注目される背景

従来の「非常時専用の備蓄」は、置き場や更新の手間、期限切れのロスが課題でした。一方、日本は地震・台風・豪雨・津波・火山など多様な自然災害が周期的に起こる地域です。政府の防災白書も、日本の国土条件上、災害が発生しやすいことを明言しています。だからこそ、日常に溶け込む形で備える「フェーズフリー（Phase Free）」が注目されているのです。

日本の災害リスクと、“日常の延長”でできる防災

ライフラインが途絶えると、照明・通信・調理・情報取得が同時に難しくなります。こうした“同時多発の困りごと”に、平常時から使い慣れたモノで対処できると心理的負担も軽減します。

食品は「ローリングストック（備える→食べる→買い足す）」で、期限切れを抑えつつ在庫循環。目安として、最低3日分、可能なら7日分を家族構成に合わせて用意します。水は1人あたり1日約3 L（飲用2 L＋調理1 Lが目安）。主食（ごはん・麺・パン）、たんぱく源（缶詰・レトルト）、野菜・果物の保存食を“ふだんの味”で揃え、消費した分だけ買い足します。乳幼児や高齢者、アレルギーのある方は専用品を忘れずに。

あわせて、電池・充電ケーブルの規格を家族でそろえると在庫の無駄が減ります。日常で使っているモバイル電源やポータブル電源を定期的に充電しておけば、停電時にそのまま転用できます。

フェーズフリーとは？その意味と考え方

「フェーズフリー」という言葉を耳にする機会が増えましたが、実は単なる防災用語ではありません。日常と非常時の“あいだ”をつなぐ、新しい価値の考え方です。

定義と誕生の背景：日常と非常のフェーズ（社会の状態）を取り払い、どちらの時も役に立つ価値をめざす概念。2014年、佐藤唯行氏が提唱し、その後に認証制度も整備されました。東日本大震災以降の“備えの定着の難しさ”を前提に、QOLを保つ発想として広がりました。

フェーズフリーとは何か：いつもの生活をそのまま非常時でも活用できるデザインや仕組みを指します。

フェーズフリーの5つの原則（要旨）

• 常活性：どんな状況でも使えること
• 日常性：日常から違和感なく使えること
• 直感性：誰にでも分かりやすいこと
• 触発性：日頃から防災意識を喚起すること
• 普及性：広く参加・展開できること

フェーズフリーのメリットとは

フェーズフリーの考え方には、単なる“防災の新語”にとどまらない、多くの実践的なメリットがあります。日常の快適さを保ちながら、無理なく備えを続けられる点こそが大きな魅力です。

日常に溶け込む防災意識：しまい込まず、毎日使う。使い慣れていれば、非常時も迷いなく扱えます。

保管とコストの最適化：日常品を“備蓄兼用”にすれば、二重購入や廃棄ロスを抑制。ローリングストックは食品ロス削減にも有効です。

コストにやさしい始め方：

• 一気に買い揃えず、**買い替えのタイミングで“フェーズフリー化”する。
• いつも買う生活消耗品を「1つ多めに買って、使ったら補充」**のリズムにする。
• 乾電池や充電ケーブルを共通規格に統一し、在庫と買い増しを最小化。
• “本当に食べる味・サイズ”だけを回す（食べ切れずに捨てるコストを防ぐ）。

非常時のQOL向上：慣れた道具と食で、食欲・睡眠・体温維持・情報取得の質が安定しやすくなります。

地域レジリエンスと環境面：地域施設や商品が平常時の賑わいを生みつつ、非常時の拠点や資源にもなる。結果として「使われ続ける備え」は無駄が少なく、持続可能性に資します。

フェーズフリー商品と「価値の4分類」

フェーズフリー協会の整理では、価値の提供方法をA〜Dの4つに分類できます。

A：防災・特定用途の道具を日常でも役立てる（例：ヘルメット、キャンプギア 等）

B：日常品の“使い方”提案で非常時にも価値を出す（例：ボトル＋給水術）

C：日常・非常で同じ価値を提供し続ける（例：耐水の筆記具）

D：日常と別の使い道で非常時に力を発揮（例：PHVの電源供給）

• 日常的に使えるアイテム例：マグカップ（計量目盛つき）、モバイル電源（照明・通信・小家電の母艦）
• 使い方で価値が出るアイテム例：多機能ツール、フードコンテナ（簡易炊飯）
• 日常＋非常で価値を提供するアイテム例：防滴ライト、ソーラー充電器
• 災害時に特に役立つアイテム例：簡易トイレ、発電機能付きツール　※いずれも“普段から使っておくこと”が鍵

さらに具体例（A〜Dを各1つ）：

A：自転車用ヘルメット……普段は通勤・通学用、非常時は落下物から頭部を守る。

B：保温ボトル……日常は飲み物用、停電時は湯たんぽ代わりにして体温維持。

C：充電式LEDランタン……夜の読書灯としても、停電時も同じ操作感で明かりを確保。

D：災害対応自販機……平時は販売機、災害時は無償・優先提供モードで飲料を供給。

世帯・地域別のヒント：

家族世帯：人数×日数で水と主食を計算。乳幼児食・おむつ、介護食・常備薬、予備メガネなど“人別”に袋分け。

単身世帯：食べ切りサイズを中心に。小さめ容量のポータブル電源で在宅ワーク＋停電1〜2日を想定。

都市部：収納が限られるため縦積み・薄型を優先。避難所・給水所の場所をメモ。車に頼りにくい分、屋内で充電できる電源を重視。

地方・郊外：車載用の給電ケーブルや簡易ソーラーパネルが有効。井戸ポンプが電力依存なら、停電時の電源確保を事前に確認。

自治体と企業のフェーズフリー実践事例

フェーズフリーの考え方は、すでに全国のまちづくりや企業活動にも広がっています。ここでは、実際にその発想をかたちにした自治体や企業の取り組みを見てみましょう。

• 徳島県鳴門市「道の駅 くるくる なると」：交流拠点として賑わいを生みつつ、非常時は避難・食料供給の拠点に。設計段階からフェーズフリーの視点を取り入れています。
• 香川県高松市「かまどベンチ」：普段はベンチ、非常時は座面を外すと“かまど”に。地域の炊き出しや自助・共助を後押しする仕掛けです。
• 企業の取り組み（ホテル×防災）：平時は宿泊施設、非常時は避難・医療拠点に転用できる「レスキューホテル／HOTEL R9 The Yard」がフェーズフリー認証を取得。施設そのものが“使われ続ける備え”になっています。

フェーズフリー時代の防災グッズ選び方

フェーズフリーの考え方を暮らしに取り入れるには、道具選びも大切です。防災グッズを「特別なもの」としてではなく、毎日の生活に自然に溶け込むアイテムとして選ぶことがポイントになります。

耐久性・操作性・デザインのバランス：耐候性・難燃性・直感的UIは“誰でもすぐ使える”直感性に直結します。

多機能・省スペース：一台多役（照明・通信・給電・情報表示など）が、収納負担を下げ、普段使いの頻度も上げます。

メンテのしやすさ：電池寿命や充放電管理、交換部材の入手性、アプリ管理など“続けやすさ”を重視。

ローリングストックとの相性：食や衛生品は普段使いで回す。調理家電やポータブル電源は、日常の小さな不便を解消しながら、停電時の安心にも直結します。

予算を抑えるコツ：「まずは停電で困る順に1〜3品から」→水・主食・明かり。次に既存品をアップデート（乾電池を充電池に、ケーブルを共通化）。買い増しは特売のときに“1つだけ多く”が続けやすいです。

日常も非常時も支える「ポータブル電源」

“フェーズフリー”は、平常時の快適と非常時の安心を両立させる考え方です。たとえばポータブル電源は、普段はベランダ家事やベランピング、ベビー家電・在宅ワークの電源として活躍し、停電時は照明・スマホ通信・小型調理に即転用できます。フェーズフリーの実践を支える家電製品には、軽量で扱いやすく、非常時に即時転用できる工夫が求められます。 ここでは、フェーズフリー認証を取得した具体的な家電例として、BLUETTIのAORAシリーズを見てみましょう。

ふだんの家電＋停電対策を一台で——AORA 80

768Wh／1,000W。フェーズフリー認証取得。45分で約80％の急速充電、電力リフトで一部の高出力家電にも対応。**約20msのUPS（無停電）**で瞬時に切替。日常の置き場所に馴染む筐体で、家事・アウトドア・非常時をシームレスに支えます。

家族分の電力確保・冷蔵庫や調理をしっかり——AORA 100

1,152Wh／1,800W。フェーズフリー認証取得。最大1,440W入力で45分80％の超速充電、電力リフト（〜2,700W）搭載。UPS約20ms、アプリ対応、落ち着いたフォレストグリーンのデザイン。

BLUETTI AORAシリーズのポータブル電源で作るフェーズフリーな暮らしなら、「使いながら備える」リズムを、今日からはじめられます。

軽量で毎日使いまわせる私的電源——AORA 30 V2

288Wh／600W（電力リフト時1,500W）。約70分で満充電（AC最大380W入力時の目安）、重量約4.3 kgで持ち出しやすく、在宅ワークのノートPCやキッチンの小型家電、非常時の通信・照明に頼れます。新色ペールピンク／スカイブルーは、暮らしに優しく馴染む落ち着いたトーンで“隠さない防災”を後押し。

• 停電・災害時のサポート
  • 照明：LEDランタンやデスクライトの連続点灯を確保し、夜間の安全・衛生動線を維持。
  • 通信：スマートフォン、ルーター、トランシーバー等の給電で情報取得・連絡を継続。
  • 調理：電気ケトルや小型ホットプレート等に給電（電力リフト機能を活用）。
• ソーラーパネル対応：日中に再生可能エネルギーで充電すれば、長引く停電でも電力の“自給サイクル”を回せます（対象モデル・入力条件は公式仕様参照）。

仕様の要点

※ここに記した機能は、各モデルの公式・認証ページの要旨を編集部が要約したものです。実使用は負荷や環境で変動します。最新仕様はBLUETTI公式サイトをご確認ください。

よくある質問（FAQ）

Q. ローリングストックは何日分を目安にすれば良いですか？

A. 最低3日、できれば7日が目安です。断水・停電の長期化が想定される地域や在宅医療があるご家庭は、無理のない範囲で少し多めに。

Q. 水はどれくらい必要ですか？

A. 1人1日あたり約3 Lが基準です（飲用2 L＋調理1 Lのイメージ）。季節や体調、乳幼児の有無で増減します。

Q. 何から揃えればいいでしょう？

A. 「停電で一番困るもの」からで大丈夫です。水→主食→明かり→通信の順で、毎月1アイテムずつ整えると負担が軽く、定着しやすくなります。

Q. 期限管理が苦手です。コツはありますか？

A. 購入日・開封日をペンで記入し、棚の手前から使うだけでも循環します。スマホで月1のリマインドを設定しておくと、買い足し忘れが減ります。

Q. 予算が限られています。節約しながら進める方法は？

A. 買い替え時にフェーズフリー化するのが最小コストです。普段よく使う消耗品を**“1つ多めに買って後ろに回す”、電池やケーブルを共通規格に統一**する——この2点だけでも出費は抑えられます。

Q. 高齢者や障害のある家族がいる場合のコツは？

A. 直感的な操作（音声ガイド付き電源、色分け収納）を優先。介護食や常備薬をローリングストックに組み込み、避難経路を家族でシミュレーション。

Q. ポータブル電源はどのくらいの容量が目安？

A. 用途→モデル名の順で選ぶと迷いにくいです。—スマホ・ノートPC中心の在宅＋短時間の停電→AORA 30 V2—ふだんの小家電＋停電対策を一台で→AORA 80—家族分の照明・通信＋冷蔵庫や簡単な調理→AORA 100

まとめ｜“使いながら備える”を、今日から

フェーズフリーは、日常の延長で災害に備える新しい習慣です。食品をローリングストックで管理し、使い慣れた道具を選び、電源にはBLUETTI AORAシリーズを活用。この3つを家族の“ふだん”に重ねれば、フェーズフリー 防災は難しくありません。今日からでも始められる小さな一歩が、家族の命と快適さを守ります。