2016年に電力の自由化が実施されて以降、より割安な電気料金の新電力を求めて「切替え」を行う世帯が増えています。
様々な異業種からも参入が相次いでいますし、単に安いだけでなく、再生可能エネルギーによって発電されたグリーン電力など、発電方法にこだわった電力会社を選ぶことも可能になっています。
反面、「新電力は電気の質が悪い」「新電力はすぐに停電する」などのネガティブな情報が耳に入ることもあって、なかなか新電力の真の姿が見えにくい状況です。
今回は、電力自由化によって生じるメリットとデメリットに焦点をあててみたいと思います。
電力自由化の目的(メリット)
電力の自由化には大きく分けて3つの目的があります。電力自由化では、「電気料金の抑制」も大きな目的です。自由化の目的は、すなわち自由化のメリットでもあります。
電力自由化の目的① 電力の安定供給
電力自由化の最大の目的が「電力の安定供給」です。
2011年3月に発生した東日本大震災では、原子力発電所や火力発電所が被災し東京電力・東北電力管内での電力供給が停止しました。
この際に明らかになった課題が『地域を超えた電力供給ができない』ということでした。
これを踏まえて「電力広域的運営推進機関」が設立され、電力会社の電力提供エリアを超えた電力供給が円滑にできるようになりました。
電気は需要が供給を上回ると大規模停電に繋がりかねず、少なくとも3%以上の電力需給の余裕が必要とされています。
2021年1月上旬には断続的な寒波の襲来によって電力需要が急激に高まったため電力需給の逼迫が起こりました。需給の余裕が3%を切るような自体も生じたため、他の電力管内からのエリアを超えた供給を受けるなどで乗り切たことがありました。
電力の自由化は、電力の安定供給への寄与に多大なものがあるのです。
電力自由化の目的② 電気料金の抑制
電力自由化前は、電気料金は経産省の認可によって定められていましたが、競争原理が働かず電気料金が高止まりしたままの状態が続いていました。
電力の自由化によって新たに参入した新電力による価格競争が起こり、従来の大手電力会社よりも割安な料金で電気供給を受けられるようになりました。
単純に電気料金が安いというだけではなく、他のエネルギーとのセット割引や、新電気を使うことで得られる付加価値など、トータルでお得感を感じられる電力供給のスタイルが生まれています。
電力自由化の目的③ 選択肢を増やす
電力自由化の目的の3つ目は「選択肢を増やす」ことです。
自由化前には地域ごとに定まった大手電力会社一択だったものが、新電力の参入によって複数の選択肢か選択できるようになりました。
料金が安いという以外にも、ガスと電気のセットプランや、CO2を排出しないグリーン電力など、利用者の考え方や好みを加味して電力会社を選べるようになっています。
また、電力会社側からみれば、サービス内容やセット割引などを利用者に選んでもらうために精査しブラッシュアップすることとなり、サービスの質の向上が期待できることになります。
また、新電力にはエネルギー関連企業だけでなく、通信関連や旅行関連の企業の参入もあり、それぞれが得意とする分野とのコラボにより、多種多様なメリットの創出が行われています。
電力自由化のデメリット
電力の自由化に伴って、メリットの部分だけでなく、デメリットについても取り沙汰されるケースも見受けられます。
電力の自由化の目的として挙げたことが「自由化のメリット」であるならば、自由化によって生じるデメリットやリスクも考えられます。
電力自由化のデメリット① 電力会社倒産と電気料金アップ
新電力会社の中には、小規模な企業も少なくなく財務体質が脆弱な場合もあって、倒産のリスクもないとは言えません。
契約している電力会社が倒産したらかといって、電気の供給は停止することはなく、契約地域の大手電力会社からの供給に切り替わります。
そういう意味で、電力の供給自体に不安はありませんが、別の新たな電力会社からの電力供給が開始になるまでの期間、電気料金が割高になってしまう場合があり注意が必要です。
小規模企業のすべてが倒産することはありませんが、倒産のリスクも完全には否定しきれないことも理解して利用すべきです。
電力自由化のデメリット② 自分に合ったメリットではない
新電力は、自社のサービスのメリットについて喧伝していますが、そのすべてが利用者にとってプラスになるとは限りません。
例えば、電気料金で得られたポイントを携帯電話料金に充当できたり、旅行代金に充当できるサービスでも、その通信会社と通信回線契約を結んでいなければメリットになりませんし、旅行に行かない人が旅行代金に充当できるポイントを貰っても意味がありません。
ただ「お得です」の言葉に踊らされずに、サービス内容をよく吟味して、自分に合ったサービス、自分や家族にとって本当にお得になるメリットなのかを見極める必要があります。
電力自由化のデメリット③ 違約金が発生する場合がある
電力会社によっては、一定期間の継続契約を定めたいわゆる「縛り」「最低利用期間」や、最低利用期間内の解約には「違約金」を求めるケースもあります。
サービスのメリットやお得感だけに目を向けず、デメリットやリスクについても契約内容をよく精査して理解した上で契約すべきです。
「縛り」や「違約金」は、一旦契約してしまえば「それを分かっていて契約した」と見なされますので、その場になって「知らなかった」「気づかなかった」は通用しません。お得なサービスほど、契約内容のチェックを厳重に行う必要があります。
電力自由化のデメリット④ 集合住宅では契約できない場合がある
原則として、アパートやマンションでも新電力と契約できますが、場合によっては集合住宅で世帯個別に新電力との契約ができない場合があります。
例えば、マンションの管理組合がマンション全体で一括契約している場合には、一世帯だけが別の新電力と契約することができない場合もあります。
事前に、管理組合(理事会)や管理会社などに確認する必要があります。
電力自由化のデマ・都市伝説に騙されるな
「新電力は○○なのでやめたほうがいい」
「新電力は××なのでやっぱりダメだな」
等々の噂レベルの情報が耳目に入る場合があります。しかし、中には都市伝説とも言うべき不正確な情報もふくまれているので注意が必要です。
電気の質は電力会社による違いはない
よく言われるのが『新電力の電気は質が悪い』や『新電力の電気はパワーがない』などです。
しかし、よく考えてみると不思議な説です。同じ送電線で送られてくる電気なのに、契約する電力会社によって電気の質やパワーをどうやって変えるのかと考えると、この手の情報は誤りであることがわかります。
大手電力会社の電気でも、新電力の電気でも『電気は電気』、質やパワーに差はありません。
不確かな情報を鵜呑みにして振り回されないようにしましょう。
新電力だから停電しやすいことはない
『新電力に替えてから停電しやすくなった』というのも正しい情報ではありません。質やパワーの問題と同様に、同じ送電線を通って供給されるのに、新電力の契約者だけ停電を多くすることは不可能なことです。
新電力が停電する時には、大手電力会社も停電します。大手電力会社が停電していなければ、新電力でも停電しません。
新電力への不安
日本には「安かろう、悪かろう」という言葉があります。
ある意味で正しく、ある意味では間違っています。
とかく安いものは品質が低い傾向は確かにありますが、必ずしも安いものが粗悪品だとは限りません。
特に電気の場合は、自宅に電気を供給するための送電線は、大手電力会社用と新電力用が分けられているわけではないので、電気の質やパワー、あるいは停電しやすいなどの違いはありません。
正しい情報と、過度に不安を煽るような不正確な情報を取捨選択することが重要です。
節電と自家発電のすすめ
我が国の発電は火力発電への依存度が高く、再生可能エネルギーによる発電比率の向上を進めてゆかなければなりません。
国としての自然エネルギーによる発電比率の拡大は、利用者個人個人が自然エネルギーによる「電力自給」を行い促進することによって貢献することが可能です。
つまり、太陽光発電などを利用して家庭で自家発電を行うことで、電力会社への依存を減らすことができます。自家発電した分だけ、ACコンセントから使用する電気量を減らせることになります。
電力会社が各家庭に供給する電力が減少すれば、発電の主力を担う火力発電自体を削減できることになり、国として火力発電への依存度を減少させることに繋がってゆきます。
おすすめポータブル電源
BLUETTIが今年発売したばかりの「AC200L」は、家庭でのオフグリッド化を進めやすい大容量ポータブル電源です。
AC200L本体の容量2,048Whだけでも大容量と言えますが、AC200Lは拡張バッテリーを接続することで、最大8,192Whまで容量を拡大することができ、ACコンセントからの電気使用量の削減に貢献します。
それには、AC200Lの容量を自家発電で賄うことが前提条件になりますが、AC200Lは最大145V-1200Wでのソーラーパネルからの充電が可能であり、1日に5時間の日照時間があれば、6000Whもの電力を充電し蓄えることが可能です。
電力自由化のデメリットまとめ
電力の自由化には大きく分けて3つの目的があり、それが自由化のメリットです。
(1)電力の安定供給
(2)電気料金の低廉化
(3)電力供給元の選択肢の多様化
東日本大震災の経験から自由化が一気に進み、利用者は料金の安さはもちろん、他の多様なニーズに基づいて電力会社を選べるようになりました。
しかし、その反面でデメリットも存在しますし、不正確でネガティブな情報も出回っているため、利用者自身が新電力のサービス内容をきちんと理解し吟味することが求められています。
不正確な情報に振り回されずに、新電力を上手に活用してゆきましょう。