2025年以降に新たに住宅建設を予定・検討している方は「省エネ基準」について知る必要があります。今回は、2025年4月に義務化が決定している住宅の「省エネ基準」について解説します。
省エネ基準とは
省エネ基準(省エネルギー基準)とは、『建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令』に記載されている「建築物エネルギー消費性能基準」のことです。
近年、住宅・建築物部門のエネルギー消費量は我が国全体のエネルギー消費量の3割以上を占め、他の部門に比べて増加が著しいことから、住宅・建築における省エネが求められています。
国は自らが主導して推進する住宅向けの省エネに関する基準「省エネ基準」を2025年4月に義務化することによって住宅の省エネ化の促進を狙っており、同年4月以降に新たに建築される住宅はこの基準への適合が求められます。
省エネ基準適合住宅のメリット
省エネ基準に適合した住宅には、大きく分けて2つのメリットがあります。
1つは省エネ基準適合住宅に居住することで、住民が快適に暮らすことができるということです。
省エネ基準適合住宅は断熱性能や換気性能が優れているため、季節に関係なく冷暖房への依存度が減少し自然な形で快適な生活がおくりやすくなります。
コスト面からも、冷暖房費(電気料金やガス代・灯油代など)が抑えられるので、家計負担の軽減が期待できる点も大きなメリットです。
また断熱性能の高さは室内の結露を抑制できるため、カビの発生を抑えることができます。カビの発生が抑えられれば、カビをエサにするダニの発生を抑制することに繋がり、ダニによるハウスシック症候群の発症抑制に期待できます。
もう1つのメリットは、我が国全体のエネルギー消費量の削減に繋がる点です。
各家庭での電気使用量やガスや灯油などの消費量が減少すれば、エネルギーのほとんどを輸入に頼るわが国のエネルギー輸入量の減少に直結し、そのことはさらに「エネルギー安全保障」の観点からも大きなメリットとなります。
ウクライナやイスラエルなどでの紛争のように、地政学的リスクによってエネルギー価格の高騰が生じた場合でも、再生可能エネルギーによる発電比率の向上と合わせ、エネルギー安全保障の強靭化に繋がります。
省エネ基準適合住宅のデメリット
省エネ基準適合住宅には大きなメリットが期待できる反面、デメリットがないわけではありません。
その最大の問題は、省エネ基準適合住宅の建築は省エネ基準非適合住宅よりも費用面の負担が増えてしまうことにあります。
断熱性能の高い断熱材や窓ガラスの設置、換気性能を上げるための機器や設計など、省エネ基準に適合させるためには最新の機器や部材の導入、専門的な設計などが不可欠です。
非適合住宅と比較した場合のコスト増は住宅の面積や構造によって異なるため一概に言えませんが、いずれにしても、省エネ基準に適合させるためにはある程度のコスト増は避けられず、その点が最大のデメリットと言えそうです。
省エネ基準に適合した住宅
画像出典:国土交通省
それでは、省エネ基準に適合した住宅にはどのようなものがあるのかを見てみましょう。
現在、一般的に省エネ基準適合住宅として認知されている住宅は以下のとおりです。
ZEH住宅
ZEH住宅(ゼッチ住宅)とは、『Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)』の略語で、暖冷房・換気・給湯・照明の4種類の一次消費エネルギーをゼロ以下にすることができる住宅です。
ZEH住宅では、住宅の断熱性能や省エネ性能を向上させてエネルギー消費を抑えることに加え、太陽光発電等による電力自給など自らエネルギーを生み出すことで、トータルで一次消費エネルギーをゼロ以下にすることが可能となります。
LCCM住宅
画像出典:pixabay.com
LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナスハウス)は住宅性能の基準の一つで、住宅の建設時から居住時、廃棄の際に二酸化炭素の排出量を抑えられる省エネ住宅を指します。
LCCM住宅の建設時には、柱・基礎・壁など骨組みに、木材の運搬距離が短くなり建築段階でのCO2排出量の削減が可能な国産材を使った木造住宅を推奨しています。
また居住中には、UA値(※)を抑える「高気密・高断熱」設計が採用され、一般的な住宅と比べてのエネルギー消費量を抑制、さらに太陽光パネルなどを活用した電力自給などによってCO2の排出量を抑制します。
※UA値…UA値は住宅の断熱性能を表す指標で「外皮平均熱貫流率」と言います。住宅の窓などの開口部、天井や屋根、床下などから外へ逃げる熱量を表しており、数値が小さいほど逃げる熱量が少なく断熱性能が高いことを表します。
ZEH住宅は、一次消費エネルギーをゼロ以下にするなど居住時の省エネに焦点が置かれていますが、LCCM住宅は、建設から居住・廃棄までのCO2排出量も勘案されている点が特徴です。
その意味で、LCCM住宅はZEH住宅よりもさらに環境に配慮した高基準住宅であると言えます。
認定低炭素住宅
画像出典:pixabay.com
「低炭素住宅」とは、二酸化炭素の排出を抑えるための対策が取られた、環境にやさしい住宅のことです。
先日の『東京都の太陽光発電設置義務化』に関する記事でも、東京都のCO2排出の排出量の約7割は住宅用・業務用の建物からの排出となっていましたが、これは東京都に限らず我が国全体の傾向です。
こうした社会経済活動などに伴うCO2排出量の増大に対して、低炭素化に向けた取り組みをいち早く進めることが重要であることから、都市における低炭素化の促進を目的として平成24年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律」(エコまち法)が施行されました。
「低炭素建築物認定制度」は、「エコまち法」に基づきスタートした新たな制度がで、自治体から「低炭素住宅」と認定されることで、住宅ローン控除の控除額が増額されたり、登録免許税の税率が低くなるなどの税制上の優遇措置が受けられるメリットがあります。
認定長期優良住宅
長期優良住宅は、耐久性などの基準をクリアして一般住宅よりも長く快適に暮らせる住宅ですが、さらに「長期優良住宅認定制度」の基準を満たし認定を受けた住宅を『認定長期優良住宅』といいます。
認定長期優良住宅として認定されるためには、以下の7つの評価項目に合格している必要があります。
・省エネ性能
・耐震性
・バリア―フリー性
・居住環境
・劣化対策
・維持管理の容易さ
・維持保全計画
また、認定長期優良住宅の認定を受ける事で、以下のようなメリットを享受することができます。
・住宅ローン控除が拡大
・固定資産税の減税
・不動産取得税の減税
・投資型減税
・登録免許税の税率の引き下げ
・住宅ローンの金利の優遇
・補助金の利用
・地震保険の保険料の割引
・家の資産価値向上
性能向上認定住宅
「性能向上認定住宅」は住宅の認定制度のひとつで、太陽光発電や蓄電システムや断熱性が高くエネルギー効率の高い設備を設置した住宅を指します。
具体的には、性能向上計画認定を受けた住宅が性能向上住宅としてみなされます。
太陽光や風力等の自然から得られる「一次エネルギー」と、一次エネルギーを変換・加工した電気や都市ガス等を使用する冷暖房・換気・照明・給湯設備の「二次エネルギー」消費量が基準値の0.9であることや、「外皮平均熱貫流率(UA値)」の数値が1.0以下であることが求められます。
また「建築物エネルギー消費性能向上計画に記載された事項が基本方針に照らして適切なものであること」や「資金計画がエネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切なものであること」が同時にクリアされていなければなりません。
スマートハウス
「スマートハウス」は、1980年代にアメリカで提唱された住宅の概念で、照明機器や調理機器・給湯機器や家電製品などの住宅内の設備をネットワーク連携し最適制御することで、居住者の生活に即したサービスを提供しようという住宅の一つの在り方を表す言葉です。
ただし、上記の他の認定住宅とは異なり、「スマートハウス」には厳密な定義や法令がないため、省エネ性能やエネルギー自給をトータルで制御する住宅の「概念」として使用されます。
電力自給による省エネにおすすめのポータブル電源
ここまで住宅の「省エネ基準」について見てきましたが、実際に省エネ基準が義務化されるのは2025年以降ですし、対象は新規に建築される住宅であり既存住宅は対象になりません。
しかし、「省エネ」や「電力自給」は新たに建築される住宅だけが適応していればよいわけではありません。
省エネや電力自給の目的は、我が国のエネルギー使用量の削減とそれによるエネルギー安全保障の強靭化、さらには限りある化石燃料の保全など、広い視野に立脚したものである以上、誰もが取り組むべきものであることは明らかです。
省エネや電力自給は、実はとても身近で手軽に実践することが可能です。
例えば、家の屋根にソーラーパネルが設置できなくても、折りたたみ式のポータブル型ソーラーパネルで発電した電力をポータブル電源に貯めておき、好きな時間・好きな場所でその電力を利用するだけで、ACコンセントからの電力を使わない「オフグリッド」という形で「省エネ」を実践することが可能です。
【おすすめポータブル電源】
BLUETTI AC200Lは、ポータブル電源本体だけでも2,048Whの大容量電力を蓄電しておくことが可能ですが、さらに拡張バッテリーの仕組みを使用することで、最大8,192Whもの超ド級の容量を確保することが可能です。
また、AC200Lは出力面も充実しており、定格出力は複数の家電を同時使用した場合でも消費電力の合計が2,000Wまでは必要な電力を供給することができる上、定格出力を超えた場合でも「電力リフト」機能によって家電の電圧を下げ、最大3,000Wまで供給を続けることが可能です。
住宅の省エネ基準 まとめ
2025年から義務化される住宅の「省エネ基準」は、エネルギーを無駄なく使い、電力自給などによってエネルギー効率を高め、エネルギー消費量やCO2排出の抑制を目指す施策です。
地球温暖化は人類喫緊の課題であることを勘案すれば、エネルギー消費やCO2排出の多くの部分を占める住宅の省エネ化を急がねばなりません。