地球温暖化が懸念され、CO2の排出量削減が叫ばれる中、2023年12月15日、東京都議会において、新築の建物に太陽光パネルの設置を義務づける環境確保条例の改正案が賛成多数で可決・成立しました。
気になる東京都の太陽光発電の設置義務化について解説します。
太陽光発電の設置義務化の目的は何なのか、義務化される対象や注意点などをまとめました。
太陽光発電設置義務化の目的
画像出典:東京都
東京都が2023年9月23日に公表した中小新築建物に係る新制度の概要と支援策についての『太陽光パネルQ&A』によれば、太陽光発電設備の設置義務化の目的を以下のように説明しています。
(1)現状、東京都内のCO2排出量の約7割が建物のエネルギー使用に起因している
(2)2050年には、建築ストックの約5割(住宅は約7割)が新築に置き換わる見込みである
(3)都内においては新築物件への対策が極めて重要である
(4)地産地消エネルギーである再エネの導入の最大化を図るため屋根を活用する
(5)年間通じて日射量が安定している東京は太陽光発電位適した地域である
(6)地域特性を踏まえ、2030年に新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備の設置を目指す
以上を要約すると以下のような内容になります。
【以下要約】
2020年の速報値では、東京都内のCO2排出量の約7割は、業務部門・家庭部門を合わせた『建物』でのエネルギー消費に起因しています。
また、建物は建築されて以降、長期間に渡って使用される傾向があるが、都内では2050年時点で、約5割の建物(住宅用は約7割)が新築に置き換わると見込まれており、建物への対応が脱炭素化や良質な都市環境の実現に向けて重要です。
東京で生み出して東京で消費するという意味での「地産地消」エネルギーである再生可能エネルギーの導入の最大化を図るためには、建物が多い大都市ならではの「屋根」を最大限活用することが有効です。
画像出典:東京都
幸い、東京は年間を通じて日射量が安定しており太陽光発電に適した地域である一方、現時点での住宅の屋根へのソーラーパネルの設置割合はわずか4.24%と限定的であるため、都内には太陽光発電設備を設置し発電を行うための大きなポテンシャルが存在すると言えます。
これらの東京都のちいきとくせいを踏まえつつ、2030年に新築住宅の6割に太陽光発電設備の設置を目指す国の目標と方向性を同じくして取り組みを進めることが重要です。
2025年4月から太陽光発電設置義務化が施行される
前項のような考え方に従って、都内の住宅の屋根を最大限活用して再エネ(太陽光発電)による発電を促進し、脱炭素化やレジリエンス向上を加速させようというのが「義務化」の狙いです。
義務化の対象となる建物は?
延べ床面積2,000㎡未満の中小規模新築建物が、太陽光発電設備の設置が義務化されます。
前項グラフのように、業務部門41.2%、住宅部門32.3%と、都内のCO2排出量の実に73.5%が建物でのエネルギー消費に起因することが分かっています。
さらに大都市東京には数得きれない建物が存在し、太陽光発電装置の設置場所としては大きなポテンシャルを秘めている反面、現状の設置割合は4.24%とごく僅かに留まっています。
このポテンシャルを秘めた建物の屋根を最大限活用すべく、2025年4月以降に新築される延べ床面積2,000㎡未満の中小規模の建物には、太陽光発電設備の設置が義務付けられることとなりました。
太陽光パネルの設置義務者は誰?
東京都の太陽光発電設備の設置義務者は、建物の建て主や所有者ではありません。
東京都の「太陽光パネルQ&A」には『ハウスメーカー等の住宅供給事業者は、注文住宅の建設事業者や建売住宅を新築し販売する事業者として、都が定める指針に基づき必要な措置を講じ、環境への負荷低減に努めるよう求められます。』とあります。
つまり、工務店やハウスメーカーといった施工業者になります。
東京都の太陽光発電設備の設置義務化の制度は、施工業者がいかに魅力的な太陽光パネルを標準設置した魅力ある商品(建物)ラインナップを拡充することで、脱炭素社会に貢献しながら、災害に強く健康で快適な住宅の購入等ができる仕組みを目指しています。
制度の対象となる施工業者は、年間20,000㎡以上の住宅やビルを建築する大手事業者で、建設工事を行う際には太陽光発電の設置が義務となります。
すべての建物に太陽光発電設備を設置しなければならないの?
例えば、日当たりが悪く太陽光発電に向かない場合や、狭小な住宅で屋根の面積が小さい場合でも、義務化の対象となる施工業者は、必ず太陽光発電設備を設置しなければならないのか、疑問に思うケースがあります。
このような場合には、施工業者の申し出によって「設置対象」から外すことも可能ですし、同じ業者が過去に建設した建物に太陽光パネルを新たに設置した場合は、代替措置として設置基準の達成に利用することが可能です。
要するに、建物1件1件で判断するのではなく、義務化対象の施工業者が供給する建物全体で設置基準の達成を求める仕組みというわけです。
太陽光発電設備義務化のメリットとデメリットは?
東京都の太陽光発電設備義務化においては、いくつかのメリットとデメリット(リスク)が想定されます。
太陽光発電設備義務化のメリット①毎月の電気代を削減できる
自家発電による電気を使用することから、電力会社からの電力供給量が減少し、電気料金の削減が期待されます。
太陽光発電設備義務化のメリット②防災力が高まる
災害時でも蓄えた電力を使用することができるため、電力会社からの送電て停止しても自宅内で一定の電力を確保することが可能です。
太陽光発電設備義務化のメリット③脱炭素社会に貢献する
太陽光発電は、発電の際にCO2をほとんど排出しないため、CO2排出量の削減や脱炭素社会の促進への貢献が期待できます。
太陽光発電設備義務化のデメリット
太陽光発電設備義務化によるデメリットやリスクも懸念されています。
画像出典:東京都
デメリットの最初に挙げられるのが「住宅価格の上昇」です。
単純に太陽光発電システムを取り付けることによる住宅価格の上昇が懸念されますが、東京都では「支援制度」を設けることにしています。
東京都の試算では、4kwのソーラーパネルを設置した場合で、電気料金の削減や売電収入によって約6年で自己負担額の回収が可能としています。
また、売電収入に関しては「確定申告」が必要になったり、火災の際に有毒ガスが発生する可能性、さらには寿命となったソーラーパネルの処分の問題など、様々な懸念やリスクが想定されています。
【参考】太陽光発電設備義務化への懸念についてはこちらをご参照ください。 |
義務化以降に建売分譲住宅の購入者等に求められることは?
太陽光発電設備設置の義務化は、建売分譲住宅の購入者が「住宅の断熱・省エネ性能の向上」や「再エネ導入の意義や効果」などについて理解を深めて、環境負荷低減に努めるという観点から検討した上で購入について判断する仕組みです。
そのためには、供給事業者が建売分譲住宅の購入者に対して、断熱・省エネ、再エネ等の環境性能に関する説明を行うことが求められるとともに、東京都は建売分譲住宅の購入者向けに必要な情報提供を行うとしています。
義務化対象でなくても太陽光発電を手軽に実践可能
新築住宅への太陽光発電整備の設置が義務付けられるのは、2025年4月以降のことですし、現時点では、東京都と神奈川県川崎市での施行が決まっているだけですので、施行までの期間や東京都や川崎市以外の地域では未だ義務化されるかどうかは不明です。
しかし、CO2排出排出の問題や地球温暖化の問題は、義務化とは無関係により多くの人が取り組むべき問題であり、義務化されていないから関係ないというわけにはゆきません。
小さなことでも、再生可能エネルギーを活用することによってCO2排出量の抑制に取り組むべきですし、意外に手軽に簡単にCO2排出量を削減できるものです。
例えば小さなポータブル電源と折りたたみ式ソーラーパネルで、毎日50~100Wh程度の自家発電を行うことでも、それだけ火力発電で生み出した電力への依存を減らすこととなり、それはCO2排出削減に寄与することができます。
もっと単純に言えば、節電をすることだけでもCO2排出削減には効果があるので、義務化されている・いないに関係なく誰もが取り組むべき課題です。
おすすめポータブル電源とソーラーパネル
自宅で行うCO2排出削減への取り組みには、2,000Wh程度の充電容量の電源と、日に1,000Wh~1,500Wh程度の発電が可能なソーラーパネルがおすすめです。
BLUETTI AC200Lは、容量2,048Whの大容量ポータブル電源ですが、拡張バッテリーの仕組みを採用しており、最大8,192Whまで容量を拡大できます。
最大出力350Wのポータブル式ソーラーパネルPV350と併用することで、晴天時であれば、日に1,200Wh~1,500Whほどの電力を生み出して蓄電しておくことが可能です。
東京都の太陽光発電設置義務化まとめ
今回は、先日2023年12月15日に東京都議会において可決・成立した「新築の建物に太陽光パネルの設置を義務づける環境確保条例改正案」についてまとめました。
条例の施行は2025年4月からで、都内の延べ床面積20,000㎡超を供給する大手施工業者が新たに建設する建物への太陽光発電設備の設置の義務を負うこととなります。
同じタイミングで神奈川県川崎市でも同様の義務化が施行され、今後も多くの自治体が追従するものと予想されます。
必然的に購入者・注文者もその目的や設備内容について充分な理解が必要となります。