今回は四国電力の電気料金値上げを取り上げます。
四国電力では2023年6月に電気料金の値上げを実施しましたが、その値上げの内容や値上げの原因などを解説します。さらに、2024年にも料金値上げが実施されるのかについても確認しておきましょう。
四国電力の料金値上げの内容
2023年6月に実施された四国電力の電気料金の値上げの内容を確認しておきましょう。
値上げされた電気料金プランや、それぞれの値上げ幅なども細かく見ておきます。値上げ幅や料金等の数値については、四国電力公式サイトの掲載情報を引用しています。
四国電力の料金値上げ幅
電気料金の値上げ幅は、一般家庭向けの従量電灯Aで29.2%、企業向けの従量電灯Bで、重量電灯A・B平均で24.2%、すべてのプランでの平均だと28.74%の値上げとなりました。
具体的に電気料金は、契約アンペアや電気使用量によって異なりますが、例えば従量電灯Aの契約で、月間の電気使用量が260kWh以下の場合には2,155円の値上げとなりました。
また、従量電灯B契約で、契約容量15kVA・電気使用量1,000kWh以下の場合は、8,066円の値上げ、さらに、多くの電力を消費する店舗や工場向けの低圧電力プランでは、契約電力8kW・電気使用量440kWh以下の場合、3,868円の値上げとなりました。
値上げされた料金プラン
値上げが実施された料金プランは以下のとおりです。
・従量電灯A
・従量電灯B
・低圧電力プラン
・定額電灯
・公衆街灯A・B・C
・臨時電灯A・B・C
・農事用電力
最も身近な事例として、一般家庭向けの従量電灯Aで見ると、多くの世帯の使用量が収まる月間260kWh以下の場合、この値上げによる実際の月額料金は7,382円→9,537円に上昇し、月額で+2,155円(約29.2%)の値上げとなりました。
従量電灯Bで契約容量15kVA・電気使用量1,000kWh以下の場合では、月額料金41,471円→33,385円となり、月額で+8,086円(約24.2%)の値上げでした。
低圧電力契約で契約電力8kW・電気使用量440kWh以下の場合では、月額料金16,682円→20,550円となり、月額で+3,868円(約23.2%)の値上げとなりました。
四国電力の料金値上げの理由
それでは四国電力は、なぜ気料金の値上げを実施したのでしょうか、その原因や要因を見てみましょう。
原油価格の高騰
まず最初に挙げられるのが「原油価格の高騰」です。原油価格の高騰には以下のような要因があります。
(1)産油国の減産
産油国は、原油価格の安定のために生産量を調整します。市場の原油価格が産油国の希望価格よりも下回れば、減産を行って原油価格の下落を抑制します。
(2)原油需要の増加
新興国の経済発展や、コロナ禍に影響されて悪化した世界経済の回復に伴ってエネルギー消費量が増加していますが、産油国が増産しない場合には、需要と供給のバランスにより原油価格が上昇します。
(3)地政学的リスクの増大
ウクライナ、イスラエル、パキスタンなどでの戦争や、政治不安などが原油の供給を妨げる要因となり、原油価格が上昇します。
その他にも、投機的な資金が大量に原油に投資されるなど、原油価格の高騰には様々な要因があります。
燃料費調整制度の改定
燃料費調整制度とは、電力会社が発電に必要な燃料費の変動を、利用者が支払う電気料金に反映する仕組みです。
発電量の約7割以上を化石燃料による火力発電に依存するわが国では、前項のような原油価格の高騰が起こると必然的に発電コストが上昇し、電気料金を据え置いたままでは電力会社は経営が成り立たなくなってしまいます。
そのため、この制度によって、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料の価格変動分が毎月の電気料金に自動的に反映されるようになっています。
託送コストの見直し
「託送料金」とは、電力会社が送配電事業者に支払う送配電網の利用料金です。
電力自由化に伴って、発電事業と小売り事業の分離「発送分離」が行われ、発電した電力を送配電事業者の送電網を利用して各家庭やオフィス、工場などへ電力を供給することになりました。
託送料金は、電気料金の中から送配電事業者に支払われていますが、様々な要因で託送料金が上昇しており、利用者に請求される電気料金額も上昇することになります。
託送料金の上昇には以下のような要因があります。
(1)脱炭素化への取り組みとして普及が急がれる再生可能エネルギーの導入に伴う送配電網の強化や新設の費用が発生する
(2)老朽化している送配電網の刷新や、送電線の地中化などのインフラに関わる費用の増大
ちなみに、現在の託送料金は一般家庭の電気料金の30%~40%を占めていると言われていますが、上記のような理由から託送料金は今後も上昇を続けると見られています。
2023年6月、四国電力は全体で28.74%の電気料金の値上げを実施しましたが、そのうち、4.64%は託送料金の見直しに伴うもので、値上げ幅の約16.1%を占めています。
四国電力の料金は2024年も値上げされるのか
2023年6月に料金値上げを実施した四国電力ですが、2024年にも値上げを行うのか、行わないのか、気になるところです。
前述のように、送配電網の利用料金である「託送料金」は今後も上昇すると予測されていますし、原油価格も大幅な下落は予測しにくい状況であることから、2023年の値上げの際の要因は継続していると見ることができます。
エネルギー安全保障上の地政学的リスクは減るどころか、パキスタンなどで新たな紛争が起こりそうな気配を見せていますし、一旦は円高方向に進んだ円相場もここへきて再び円安に傾いてきています。
一方、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策」に基づく措置によって、2023年12月まで電気料金の値引きが行われていましたが、2023年11月2日の閣議において、現在の措置を2024年4月まで継続することが決定しました。
こうしたことを踏まえると、2023年の値上げ要因は継続しているように見えますが、様々な要因が複雑に影響する電気料金については、四国電力から正式な発表があるまでは値上げが実施されるのかは見通しが立たない状況と言えます。
電気料値上げに対抗する方法はある?
電気料金の値上げに市民は対抗する方法はあるのでしょうか。電気料金を引き下げる方法や、電気使用量を抑制する方法などを考えてみます。
電気料金の削減は国のエネルギー安全保障に直結する
電気料金を削減することは家計費の圧縮になります。とても個人的な小さな事象に思えますが、実は、多くの家庭が電気料金を削減する、つまり節電することは、我が国全体のエネルギー安全保障(※)に直結していることなのです。
(※)エネルギー安全保障とは、経済活動に必要なエネルギーを妥当な価格で安定的に確保するための取り組みのことです。
我が国の発電の約70%は火力発電によるもので、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料の9割を輸入に頼っています。
つまり、一般家庭(オフィスや工場なども含めて)で節電して、電気使用量を減らすと、電力会社が発電すべき電気量が減ります。発電量が減れば燃やす化石燃料も少なくなります。必然的に海外から購入する化石燃料の量も減ります。
より多くの電力が必要で、より多くの化石燃料を調達するには多少割高でも買わないわけにはゆきませんが、必要量が減れば安定的にエネルギーを調達できるようになる…と考えると、節電や省エネに取り組む人が増えることが何よりのエネルギー安全保障対策と言えます。
省エネ家電への買い替え
現在の家電と、購入から数年経過した家電とでは電気消費量がまったく異なるため、「省エネ家電」への買い替えは、電気料金削減に大きな効果があります。
とはいえ、ごく普通に使えている家電をあえて買い替えるのでは、削減できる電気料金では購入コストをペイすることはできませんので、買い替えは、買い替えタイミングがきた家電を順次買い替え、その際に省エネタイプを選ぶしかありません。
例えば、まだ点灯する電球を買い替えるのではなく、電球が切れたタイミングでLED電球に買い替えるといったイメージです。
家電の使い方を見直す
最新型でなくとも使い方次第では省エネは可能です。
例えばエアコンは…
・使用時間を少し短くする(早めに就寝するなど)
・設定温度を控えめにする(暖房20℃、冷房28℃)
・フィルターなどの清掃をこまめに行う
冷蔵庫の場合には…
・扉の開閉頻度を少なくし、開けている時間を短くする意識を持つ
・食品や飲料を詰め込まない(冷気が循環できるすき間を作る)
・設定温度を控えめにする
こうした小さな取り組みが引いては電気料金の削減に繋がります。
電力自給を手軽にはじめる
再生可能エネルギーによる電力自給も電気料金削減の有効な手段です。
屋根にソーラーパネルを設置して太陽光発電システムを導入すれば、節電・省エネが可能なだけでなく、災害などによる停電時の電力確保の役割も担うことができます。
しかし、集合住宅やコストの問題で誰でも太陽光発電システムを導入できるわけではありません。
そんな時におすすめなのが、ポータブル式の蓄電池とソーラーパネルによる発電・充電です。自家発電した電力を蓄電池に貯めておき、好きな時、好きな場所で電気を使用した分だけ家庭の電気料金を削減することができます。
日に2,000Wh程度の電気を自家発電して使用した場合、電力会社から購入する電力量が2,000Wh減少します。1か月換算では60,000Wh分の電気を買わずに済むことになります。
四国電力で月間使用量260kWの電気料金は9,537円/月になりますが、260kW使用時の1kW当たりの電気料金は32.79円なので、60,000Whは1,967.4円(約20%)の料金削減に相当します。
四国電力値上げまとめ
四国電力は、原油高騰による燃料費調整額の値上げや、送配電網の託送料金の上昇など様々な要因によって2023年6月に20%超の電気料金の値上げを実施しました。
一般家庭で、金額にして2,000円超の値上げはお財布に大きな痛手となりましたが、2024年については未だ値上げが行われるか、行われないか見通せない状況です。
四国電力からの正式な発表を待つしかありません。