今回は「売電収入」について考えます。
自宅で太陽光発電で生み出した電力を販売することで得られる収入のことを「売電収入」といいますが、実は年々買取価格が下落していて、もはや売電による収入で儲けることができないと言われています。
それでも設備投資を行って太陽光発電システムを導入するメリットはあるのでしょうか?
売電制度(固定価格買取制度)とは?
「売電」とは、太陽光発電によって生み出された電力を、電力会社が買い取ってくれることを指します。また、一定の価格で10年間買い取って貰えることから、正式には『固定価格買取制度』といいます。
売電価格は年ごとに変動することはなく、最初に太陽光発電システムを設置した際の売電価格が継続し、売電期間のあいだはずっと一定です。
そのため、売電をする人が売電期間に得られる収入額を想定しやすいようになっています。
売電収入の推移
区分 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
売電期間 |
|
売電価格 |
10kW未満 |
19円/kWh |
17円/kWh |
16円/kWh |
10年間 |
10kW以上50kW未満 |
12円/kWh |
11円/kWh |
10円/kWh |
20年間 |
|
50kW以上250kW未満 |
11円/kWh |
10円/kWh |
9.5円/kWh |
20年間 |
こちらは、2021年度~2023年度の売電価格の一覧表です。
売電価格は、基準価格を元にして太陽光発電システムを設置した人に利益が出るような売電価格を算出した上で経済産業省が毎年決定していますが、太陽光発電システムの設置費用・コストが普及につれて下落する点も考慮するため年々引き下げられます。
売電方式(余剰売電・全量売電)
売電制度には方式が2種類あります。
1つは『余剰売電』、もう1つは「全量売電」です。
余剰売電
余剰売電は、家庭で発電して生み出した電力を家庭内で優先的に使用し、使いきれずに余った分を「余剰電力」として売電する仕組みですが、実は現在は「余剰売電」という独立した仕組みは存在しません。
余剰売電とは、もともと2009年11月~2012年7月に実施されていた『余剰電力買取制度』において、余剰電力を一定価格で買い取ることを電力会社に義務付けていたものです。
しかし現在は2012年7月1日開始の「固定価格買取制度(FIT法)」に移行しており、その制度の中で、太陽光発電システムの出力が10kW未満の場合に限って余剰電力を買い取る仕組みが存続しています。
全量売電
これに対して、太陽光発電システムの出力がkWhを超える場合には、余剰売電に加えて「全量売電」の方式も選ぶことができるようになります。
全量売電は文字通り、太陽光発電で生み出した電力の全てを売電するもので、自らが使用する電力は電力会社から買うカタチになります。
売電価格は毎年見直されますが、原則的に、余剰売電よりも全量売電の方が高額です。このため、全量売電では自家消費分の電力を電力会社から購入しても、売電による収益の方が上回るようになっています。
ただし、家庭用として導入される太陽光発電システムの出力は4~5kWhほどなので、一般家庭では余剰売電が種であり、全量売電は工場などに設備として導入する場合を想定されています。
余剰売電のメリット
現在の『固定価格買取制度(改正FIT法)』では、太陽光発電システムの出力が10kW未満の場合は「余剰売電」しか選ぶことができません。
「余剰売電」という考え方自体が、もともと個人宅に設置した太陽光発電システムからの売電を想定しているためです。
余剰売電の、まず家庭での電力消費を優先し使い切れなかった電力を売ることで収益が得られる仕組みは、家庭内で節電を励行して自家消費電力を抑えれば抑えるほど売電に回せる電力が増えることになります。
つまり、節電すればするほど売電による収益が増えることになり、省エネや節電促進の側面でも大きな効果があるとされています。
また、10kW以上50kW未満の太陽光発電には一定の条件が設けられるようになりました。「自家消費比率を30%」というもので、余剰売電の比率は70%までとなっています。
これは、上記の家庭での省エネ・節電促進が期待できる自家消費電力の割合を増やしたいことからこうしたルールが追加されています。
固定価格買取制度(FIT)
固定価格買取制度(FIT)は、正式には『再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)』といい、再生可能エネルギーの普及促進のため、事業者や個人が再生可能エネルギーで発電した電力を「一定期間・一定価格」で電力会社が買い取ることを国が定めた制度です。
買い取り対象の再生可能エネルギーは「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5種類です。
事業者・個人を問わず再生可能エネルギーで発電した電気は全て買取対象になりますが、個人住宅の太陽光発電システム等での10kW未満の太陽光の場合には自家消費後の余剰売電がルールです。
また、ビル・工場の屋根に載せるような10~50kWの太陽光発電システムの場合は、自家消費が発電量の30%を占めなくてはならないルールとなっています。
固定価格買取制度が生まれた背景
固定価格買取制度(FIT)が生まれた背景には我が国のエネルギー自給率の低さが大きく影響しています。
日本は石油や天然ガスなどの燃料資源に乏しくエネルギー自給率は非常に低い状況にも関わらず、石油資源への依存度が高いことが問題です。
そのため国際情勢や地政学的リスクなどで安定した電力供給が難しくなってしまうため、エネルギー安全保障の観点からもわが国でもエネルギーを得やすい、太陽光や風力、バイオマス、水力、地熱などの再生可能エネルギーの比率を高めることが喫緊の課題と言えます。
ただ、固定価格買取制度(FIT)によって、事業体や個人の再生可能エネルギーの一定期間・一定額での買取りが約束されていますが、その費用のすべてを電力収入で賄えるわけではありません。
買取り金額の一部は「再エネ賦課金」というカタチで、国民が負担しています。「再エネ賦課金」は契約している電力会社の利用明細などに明記されていますので「契約明細」などで確認してみてください。
なお、「再エネ賦課金」についての詳細は別記事で詳細をお知らせしていますので、よろしければご覧ください。
卒FIT
区分 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
売電期間 |
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売電価格 |
10kW未満 |
19円/kWh |
17円/kWh |
16円/kWh |
10年間 |
10kW以上50kW未満 |
12円/kWh |
11円/kWh |
10円/kWh |
20年間 |
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50kW以上250kW未満 |
11円/kWh |
10円/kWh |
9.5円/kWh |
20年間 |
「卒FIT」とは、固定価格買取制度(FIT)による売電期間を終了することを指します。
家庭用で多い10kW未満の発電システムの場合の売電期間は10年なので、10年を経過すると固定価格買取制度(FIT)で保証された売電価格で買い取ってもらえなくなります。
例えば、2021年に固定価格買取制度(FIT)による売電を開始した場合、2031年には10年目を迎え、それまで一律19円/kWhで買い取って貰えた電力が買い取ってもらえなくなります。
ただその場合でも、家庭で電力自給することは日本の電力需給の逼迫を緩和する効果は大きいので、引き続き、家庭内の電力を自給に利用すべきです。
蓄電システムを追加することで、大容量を蓄電しておくことができるので、災害や事故などでの停電時でも数日間の電力を賄うことが可能です。
電力自給のメリット
我が国はエネルギー資源が乏しい国です。
石油や天然ガスなどのエネルギーは輸入に大きく依存しているため、ウクライナ問題や、イスラエル問題などの地勢リスク、円安などの経済リスクなどによって、安価に安定的に供給することは難しい状況が考えられます。
また、エネルギー資源が乏しい反面、発電方法は約70%以上を火力発電に頼っているなど、改善すべき点が多々あります。
エネルギー資源が乏しいわが国でも、容易に入手・利用できるのが自然エネルギーです。太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱などの自然エネルギーは何度でも再生できるため「再生可能エネルギー」「再エネ」と呼ばれ、その普及が急務とされています。
例えば、個人宅でソーラーパネルによる発電で得られた電力を、家庭の電力消費に充当して電気料金を削減できると、その分は、電力会社が供給する電力量を減らすことができます。
それは我が国の電力需給を軽減することであり、火力発電が70%超を占める現在の発電方式からすれば、エネルギー資源の節約に繋がり、ひいてはエネルギー安全保障の改善にも繋がってゆくものです。
小さなパネルで数十ワットの発電を行うだけでも、それが、何万人・何十万人もが実施すれば大きな節電効果を生み、我が国のエネルギー資源依存からの脱却に繋がる可能性があります。
例えば、一世帯が1日に1000Whの発電を行い、それを家庭の電力消費に充当したとすると、年間で365,000Wh=365kWhの節電になります。これを1万世帯で実施すると365万kWh、10万世帯なら3,650万kWhの節電が可能になり、これは最早小さな節電とは言えなくなるのです。
おすすめポータブル電源
そんなエネルギー安全保障に繋がるような、個人の小さな「節電」を後押しするのがポータブル電源とソーラーパネルです。
BLUETTI AC200Lは、容量2,048Whの大容量ポータブル電源ですが、拡張バッテリーの仕組みによって、最大8,192Whまで容量を拡大することが可能です。
前項の一世帯が1000Whの節電をする場合、BLUETTI AC200L+拡張バッテリーの最大8,192Whの容量は、1週間分以上の節電量を蓄えていることになります。
300~400W程度の大出力ソーラーパネルであれば、晴天時であれば、1日5時間の日照時間で優に1000Wh超の電力を生み出して充電しておくことが可能です。
売電収入まとめ
「再生可能エネルギー」の普及は、我が国のエネルギー安全保障にも繋がるような重大な問題であることがわかりました。
もちろん、家計としての収入を得たい、美味しいものが食べたい、旅行に出かけたいといった個人レベルの欲求を満たす側面も重要ですが、同時に、日本のエネルギー自給率を知らず知らずのうちに向上させることが可能な「売電」は積極的に取り組むべきだとわかりました。
もし売電できないまでも、小さな発電・充電で家庭の電気料金を減らすことが、電力会社の需給逼迫を緩和することも可能です。
電力自給や売電についてもっと知っておくべきでしょう。