2023年4月に九州電力が料金値上げを実施しました。
値上げと聞くと「またか」とちょっと辟易してしまいますが、実は九州電力の料金の値上げ幅は他の地域の電力会社と比べると小幅なものでした。
なぜ九州電力は他地域の電力会社よりも小幅な値上げで済ませられたのか、九州電力という会社を知ると「なるほど」と納得がゆきます。
今回は、電力料金を小幅な値上げで済ませた九州電力にスポットを当ててみます。
九州電力とは?
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その名のとおり、九州地域に電力を供給する電力会社で本店は福岡県福岡市です。
九州電力の電気は九州地域のみならず、子会社の「九電みらいエナジー」を通じて日本全国で電力契約を結ぶことが可能です。
九州電力と東京電力の電源構成を比較
ここで九州電力の電源構成を見てみましょう。
電源構成とは、電力会社が「何によって発電しているか」の内訳です。
画像出典:九州電力
こちらは九州電力の電源構成です。大きく分けて、火力発電が全体の49%、原子力発電が23%、水力発電を含めた再生可能エネルギー発電が22%となっています。このほか、電源不明の卸電力取引所調達が5%、その他(他社調達)が1%となっています。
画像出典:東京電力
一方、こちらは東京電力の電源構成です。
現在、原子力発電所が1か所も稼働していないこともあって原子力発電は0%、その影響で火力発電への依存が大きく73%、水力発電と再エネ発電で13%となっています。このほか電源不明の他社調達が8%、同じく電源不明の卸電力取引所調達が6%となっています。
九州電力と東京電力の電源構成を一覧表にすると以下のようになります。
九州電力 |
東京電力 |
|
火力発電 |
49% |
73% |
原子力発電 |
23% |
0% |
再エネ発電(水力含む) |
22% |
13% |
他社・卸電力取引所調達 |
6% |
14% |
一覧表を見ると一目瞭然ですが、実は九州電力は火力による発電比率が他社に比べて低いのが大きな特徴となっています。また、再エネ(再生可能エネルギー)による発電比率も高めで、化石エネルギーに依存しない電源構成が東京電力との違いになっています。
2022~2023年の電気料金の値上げの大きな原因は、ウクライナでの戦闘を含めた地勢的リスクによる原油価格の高騰や輸送費の増大などが一因でした。さらに円安も調達コストの増大に拍車をかけたことは疑いありません。
つまり平たく言うと、化石燃料を使用する火力発電の比率が大きいほど燃料輸入する比率が上がりコスト増となるため、電気料金の値上げ要因になったということになります。
その点、九州電力は火力発電の比率が他の電力会社にくらべて少ないため、化石燃料の調達コストが増大しにくかったものと考えられるのです。
九州電力の発電施設と発電量
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前項の通り、九州電力は原子力発電の比率が高く、火力発電比率が低いのが特徴です(2020年のデータ)。
【火力発電所】
7箇所、958万5000kW
新小倉発電所
苅田発電所
豊前発電所
松浦発電所
新大分発電所
苓北発電所など
【原子力発電所】
2箇所、414万kW
玄海原子力発電所
川内原子力発電所
【水力発電所】
143箇所、約358万kW
天山発電所
大平発電所
上椎葉発電所
一ツ瀬発電所
小丸川発電所など
【新エネルギー】
7箇所、20万8050kW
八丁原発電所
山川発電所
滝上発電所
大霧発電所など
第6次エネルギー基本計画
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第6次エネルギー基本計画とは、日本政府が策定したエネルギー政策の基本的な方向性を示す計画で、2021年10月22日に閣議決定されました。
計画段階では、
①コストが低下した再エネの大量導入
②化石燃料の価格低下
の2点を見込んでいましたが、ロシアによるウクライナ侵攻や大幅な円安などの複合的要因によって化石燃料価格=調達コストが高騰することとなりました。
こうした燃料調達費の高騰を受けて赤字に転落した大手電力7社(北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中国電力・四国電力・沖縄電力)は、経済産業省に値上げの申請を行うに至りました。
電力会社で唯一値上げ申請を見送り
これに対して九州電力は経産省への値上げ申請を見送りました。
九州電力も赤字に転落したにも関わらず値上げ申請を見送った背景には、前々項で紹介した電源構成があります。
つまり、化石燃料を燃やして発電する火力発電の比率が低く、化石燃料を必要としない原子力発電の比率が高く、再生可能エネルギー発電と合わせて45%を占めることが大きな要因です。
さらに加えて、2023年3月には玄海原子力発電所4号機が通常運転に復帰することで収支改善が見込まれたこともあって、値上げ申請を見送ったものです。
2023年4月1日から250円の値上げ
こうした経緯から、他の電力会社のような大幅値上げはせず、2023年4月1日以降の電気料金を「託送料金」の見直し分のみを反映し、250円の値上げを実施しました。
つまり九州電力の場合、発電に関わる部分での値上げは見送ったが、送電に関わるコストについて250円だけ値上げを行ったことになります。
平均30%~40%の値上げを行った他地域の大手電力会社7社に比べると、非常に小幅な値上げに留まったと言えます。
※託送料金とは
託送料金とは発電された電気を家庭などに運ぶ(供給)ための費用で、小売電気事業者が消費者から徴収した電気料金から送配電会社に支払うカタチです。送電は送配電会社に託されるため「託送料金」としてのコストが発生するためです。
九州電力は今後も値上げしないのか
2023年4月時点では、託送料金ぶんのみの値上げに抑えた九州電力ですが、今後も電気料金の値上げはしないのか、気になるところです。
あくまでも想像に過ぎませんが、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのハマス掃討など地勢リスクは継続しているものの、玄海原子力発電所は4基すべてが通常運転されていますし、円安も一息つき、状況としては値上げが切迫している状況ではないように思われます。
そう考えると、電気料金の大幅値上げは当面は行われないと考えてよいかもしれません。
電力自給による電気料金節約
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電気料金は高止まりしたままでなかなか値下げされる様子はありませんが、自宅で電気を自ら生み出すことで電気料金を抑制することが可能です。いわゆる「電力自給」によってオフグリッド(※)での電気料金の抑制が可能です。
※オフグリッドとは
グリッドとは送電線のことです。つまりオフグリッドとは送電線をオフにする=電力会社から電気を買わない(ACコンセントに電源コードを繋がない)ことをいいます。
家庭で使用する電気のすべてを自家発電で賄うには、大掛かりな太陽光発電システムの導入が必要ですが、使用電気量の一部でも自家発電に代替できればその分の電気料金を削減することができます。
コンシューマーユースの折りたたみ式ポータブルソーラーパネルは、最大350W~400W程度の発電が期待できます。
さらに350W~400Wのソーラーパネルを複数枚接続することで、1時間当たり1000W超の発電も可能ですし、1日5時間の日照時間とした場合には5,000W超の電力を家庭で生み出すことが可能です。
一方で、5,000W超の発電量を貯めておく術がなければ意味がありません。最大容量5,000W超のポータブル電源があれば貴重な自家発電を丸ごと蓄電しておくことが可能です。
例えば、東京電力の「従量電灯B」の場合、1kw時の料金は≪120kWh超300kWhまで≫で「 36円60銭」です。
5,250Wの自家発電をこの料金に当てはめると160円65銭/1日に相当します。月間30日に換算すると4,819円50銭を自家発電で賄えることになります(自家発電を100%使い切った場合)。
月間5,000円近くの電気料金削減ができれば、家計はかなり楽になるはずです。
【おすすめソーラーパネル】
BLUETTI PV350は、単結晶シリコン製の大出力ソーラーパネルで、時間当たり最大350Wの発電が可能です。
PV350を3枚直列接続することで、時間当たり最大1,050Wの発電が可能で、1日の日照時間が約5時間だとすると、1日に5,250Wもの電力を生み出すことが可能です。
ちなみに、PV350を3枚直列接続した場合の回路電圧は46.5V×3=139.5Vとなるので、電力を貯めておくポータブル電源は、ソーラーパネルからの入力時に139.5V以上の電圧を許容できる製品である必要があります。
【おすすめポータブル電源】
BLUETTI AC200Lは、ソーラーパネルから許容できる入力は最大145V/1200Wまでとなっており、PV350を3枚直列接続からも充電可能です。
また、AC200Lは本体だけでも2,048Whの大容量を誇るポータブル電源ですが、拡張バッテリーを接続することで最大8,192Whの超ド級の容量を蓄えておくことが可能なため、PV350 3枚直列で生み出す5,250Wh/日の大容量も無駄なく蓄えることが可能です。
自宅にソーラー発電システムを導入するには大掛かりな工事やコストがかかりますが、折りたたみ式ソーラーパネルとポータブル電源を使えば、比較的手軽に自家発電が可能で、生み出した分だけ電気料金を削減できます。
再生可能エネルギーによる自家発電に多くの人が取り組むことで、我が国全体の火力発電への依存度を低減し化石燃料の輸入コストを低廉化、ひいては世界情勢や地勢リスクに影響されにくくなり「エネルギー安全保障」にも貢献することが可能です。
九州電力料金を値上げまとめ
今回は、九州電力の電気料金値上げについて深掘りしてみました。
電源構成が他の電力会社と異なり、化石燃料への依存が少ない九州電力では、他社電力会社が30%~40%もの値上げを行ったのに、わずか250円の値上げに留めています。
今後も値上げしないとは言い切れませんが、状況としては、円高傾向や再生可能エネルギーコストの低下など好条件も整ってきているので、現時点では値上げの告知はありませんし、しばらくは大幅な電気料金の値上げはないと見て良いかもしれません。