ポータブルバッテリーの購入を検討中の方向けに、ポータブルバッテリーの選び方を解説します。
昨今のアウトドアブームに加え、災害対策や節電対策としても注目を集めるポータブルバッテリーですが、選び方が分からないという方も少なくありません。
そこで今回は、ポータブルバッテリーを選ぶ際のチェックポイントを紹介します。
ポータブルバッテリーとは
ポータブルバッテリー、直訳すれば『持ち運び可能な電池』です。
電力を二次電池に貯めておくことが可能で、好きな場所、好きなタイミングで電力を取り出して利用できます。ポータブル電源と呼ばれる場合もあります。
充電して貯めた電気を使って再び充電…というサイクルを繰り返すことができる電池を二次電池といいます。ちなみに充電できない乾電池は一次電池といいます。
二次電池は我々の生活の中で広く利用されています。身近なところではスマホのバッテリーも二次電池ですし、ノートパソコンやデジカメなどに内蔵されている充電可能な電池はすべて二次電池です。
ポータブルバッテリーも二次電池の一種で、より多くの電力を貯めておくことに特化しています。
ポータブルバッテリーを選ぶ7つのポイント
ポータブルバッテリーを購入する以上、どんなシチュエーションでも利用できる製品が欲しいと思うのは当然のことです。
アウトドアにも持ってゆきたいし、災害や節電対策にも備えたい…と考えるのは当然ですが、選ぶ際に間口を広く取れば取るほど、対象がぼやけてしまい明確な候補に絞り込みにくくなります。
例えば、アウトドア目的を中心に据えた場合には「携帯性」が重要な要素になるためあまり大型の電源は向きません。災害対策を中心に考えれば「携帯性」よりは「大容量」が重要な要素です。節電目的の場合には家庭内で使用する家電のすべてを稼働できる「高出力」が重要…というのが原則です。
しかし最近では、技術力でそうした原則の枠を打破する製品も登場しているので要注目です。
以下は、ポータブルバッテリー購入時にチェックすべき7つのポイントです。
電池素材~リン酸鉄リチウムイオンバッテリーがおすすめ
ポータブルバッテリーは採用している電池素材によって安全性や寿命が異なります。
以下は三元系リチウムイオン電池とリン酸鉄リチウムイオン電池の特性の比較表です。
三元系リチウムイオン |
リン酸鉄リチウムイオン |
|
エネルギー密度 |
高い |
低い |
安全性 |
普通 |
高い |
充電サイクル |
500~800回 |
2500~3000回 |
寿命(※) |
2~3年 |
8~10年 |
※毎日容量をすべて使い切った場合の寿命(所定の充電サイクル到達期間)
現在主流のリン酸鉄リチウムイオン電池はエネルギー密度が三元系に比べると低く、熱分解温度が700℃と高温で電池としての安定性が高いため「安全性が高い電源」として知られます。
また、長寿命であることもリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの大きなメリットです。
従来の三元系リチウムイオンバッテリーの充電サイクルは500~800回程度で、毎日容量を使い切った場合にはわずか2~3年で容量80%まで減少します。リン酸鉄リチウムバッテリーは充電サイクル3000回を誇り、同様の使いかたで容量80%に至るのは8~10年先です。
安全性や経済性を考えた時、今ポータブルバッテリーを選ぶのであれば、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーがおすすめなのです。
【充電サイクルとは】 充電サイクルは、放電量の合計が100%になるごとに「1カウント」されます。 ≪昨日60%使用→60%充電→今日50%使用≫ この場合、昨日の60%と、今日の50%のうちの40%を使った時点で放電量が100%になるので「充電サイクル:1回」とカウントします。充電ケーブルに繋いだ回数ではないので注意が必要です。 |
大容量~容量は多いほどよい?
使途によって必要な容量は異なります。
1泊のキャンプや車中泊であれば容量500Whの電源1台で充分ですが、災害対策を想定した場合には確保しておく電気容量は多いに越したことはないため大出力電源がおすすめなのです。
災害発生時には行政による救援が個人にまで及ぶのは、早くても発生から3日後だとされているので、その間、家族の命を守り少しでも快適に過ごすためには大きな電力が不可欠なのです。
容量拡張が可能なバッテリーが有能
とはいえ、ポータブルバッテリーは容量が多くなればなるほど製品価格がアップするため、大容量バッテリーの購入はコスト的に厳しいものがありました。しかし最近のポータブルバッテリーはこの問題をクリアできる技術を持っています。
これは、電源本体と専用ケーブルで容量拡張用のバッテリーと接続することで、電源本体の容量を増強することが可能な仕組みです。
拡張バッテリーは容量を外付け・後付けできることから電源本体の容量を小さくでき本体価格を低く抑えられます。さらに、本体と拡張バッテリーを別々のタイミングで購入できるため大きな支出が1度に集中しないためコスト負担の面でもメリットがあります。
高出力~出力は後から追加できない
ポータブルバッテリーには「定格出力」と「瞬間最大出力」の2種類の出力があります。定格出力は連続して電気製品に対して出力できるパワーを表し、瞬間最大出力は突発的な大電力に対応するための出力です。
ポータブルバッテリーの出力に関しては、容量と違って後から増やすことはできないので、容量を拡張後も不足ない高出力を持った電源を選ぶ必要があります。例えば1000Wh容量×1000W出力の電源を容量拡張で2000Whに増強した場合、容量は十分でも1000Wでは出力不足で家電の使用が制限されてしまいます。
家庭のコンセントが1500Wなので、定格出力が1500W以上のポータブルバッテリーを選んでおけば、家庭で使用するすべての家電を使うことができます。
電気製品には個々にその製品が動作するために必要な電力量「消費電力」があります。ポータブル電源の電力で電気製品を動かす場合、必ず消費電力を上回る定格出力が必要です。定格出力が消費電力を下回る場合は電気製品は動作しませんので注意が必要です。 |
定電圧機能で使えないはずの家電が使える?
定格出力が家電の消費電力より大きくないと家電を動かせない原則がありますが、この点についても原則を覆す技術があります。
それは、電気製品の電圧を下げて本来よりも少ない電力で動作させる技術で、「定電圧機能」といいます(BLUETTIでは電力リフトと呼称します)。
原則で言えば、定格出力800Wの電源では消費電力1000Wの電気製品は動作しませんが、もし「定電圧機能」機能で1600Wまで対応していれば、消費電力1600Wまでの家電を定格出力800W以内に下げて動作させることが可能なのです。
停電時などいざと言う時には本来使えないはずの家電を動作させられるのは大きなメリットです。
遠隔操作で機能確認・操作が可能
スマホアプリによる遠隔操作も便利な機能です。電源の残量や充放電状態や各種設定などを電源本体から離れた場所で、スマホアプリから確認・操作できる機能です。
本体まで行かなくても確認・操作ができるのは非常に便利です。
EPSで停電時も電力供給可能
EPSとは「無停電電源装置」のことですが、ポータブルバッテリーにも簡易型のEPS機能が備わっているモデルがあります。
停電時でも停止しては困る機器を、ポータブルバッテリーのパススルー機能を利用して電源をとっておけば、停電時にコンセントからの電力供給が止まっても、ポータブルバッテリーの蓄電池からの電力供給に切り替えることが可能です。
例えば、水槽のエアポンプが停電時でも停止せずに動作し続けることで、飼育している生物を無事に生存させることが可能です。
※あくまで簡易型なので精密機器には使用できません。
お勧めのポータブルバッテリー
ここまでの購入時のチェックポイントを踏まえた上で、筆者のおすすめポータブルバッテリーを紹介します。
【キャンプ等アウトドア向け】
・BLUETTI AC70
2023年10月に登場したばかりのBLUETTIの最新鋭バッテリーです。容量768Wh、定格1000W/最大2000Wの出力に、定電圧機能「電力リフト」で最大2000Wまで対応、スマホ遠隔操作や簡易EPSなど、上記で解説した機能をすべて網羅した高コスパモデルです。
実は筆者も実際に購入して使っていますが、コンパクトなボディに充分な容量を備えており車中泊などで大活躍です。先代EB70Sから出力が800W→1000Wに増強され使用範囲がぐっと拡がって、より使い勝手が向上しています。
また先代モデルと比べると質感が大幅にアップしている点にも要注目です。