蒸し暑い街を抜け、車窓に緑が増え始めた頃――ふいに風の匂いが変わる瞬間があります。カラリとした土の香り、遠くの沢から届く冷気。たったひと呼吸で「来て良かった」と肩の力がスッと抜けました。神奈川県には、都心からわずか一時間ほどで出合える澄んだ流れがいくつもあり、渓谷で冷水に足を浸せば都会の熱がスッと溶けていきます。河川敷にチェアを広げれば、犬や子どもが満面の笑みを浮かべます。本稿では、家族連れ・カップル・ソロはもちろん、ペット同伴でも気兼ねなく楽しめる川遊びスポットをエリア別に厳選し、アクセスのコツや現地マナーまでまとめました。タオルとサンダルと遊び心をリュックに詰め、一日だけでも“涼しい記憶”を取りに行きましょう。
神奈川県は川遊びスポットの宝庫!
◎地形が生む二つの顔
県西部の丹沢・箱根エリアは、花崗岩が長い年月をかけて削られたV字渓谷。夏でも水温は18 ℃前後で、足首まで浸けただけで「キーン」と脳天が冴えます。一方、相模川や中津川の中流~下流域は幅広い河川敷が続き、幼児でも遊べる穏やかな流れ。“キリッと冷たい渓流”と“のんびり水遊びできる河原”を同県内で選べるのは首都圏では貴重です。さらに三浦半島寄りの小河川は潮の満ち引きが混じるため水温が高く、夕立後でも濁りにくいという利点も。季節によって流速や川底の色が変わり、春の雪解けのひんやり感、秋の紅葉を映す鏡のような水面など、訪れるたび新しい表情が迎えてくれます。
◎遊びに来る人の顔ぶれ
週末朝、青根キャンプ場のゲート前にはファミリーカー、バイクのソロキャンパー、犬連れのワンボックス――見事に多種多様。年代も遊び方も違う人たちが同じ川面に笑い声を落とし合う光景は、水辺の懐の深さそのものです。平日にはリモートワーカーがポータブルオフィスを構え、「午前はテレワーク、午後は川遊び」という二刀流の過ごし方も増えました。「今日はPCより石ころを積みたい」なんてつぶやきが聞こえてくるのも水辺ならでは。
◎日帰り派も宿泊派も
東名高速や圏央道、新湘南バイパスの延伸で、横浜駅から車50分で渓流に立てるのも強み。朝7時に家を出て午前中に水遊び、午後は温泉でさっぱりし、夕方には自宅でクールダウン――という贅沢な“半日プラン”も実現可能です。一方、川沿いのキャンプ場に泊まって焚き火と満天の星を楽しめば、夕立後の石の匂いや夜の虫の声まで夏の記憶として刻まれます。深夜、鹿の遠音と川音が重なり、星が川面でそっと揺れる。「ああ、本当に時間が止まった」と実感できる静けさです。
設備が充実!安心して楽しめる川遊び&キャンプ場4選
清川リバーランド(愛甲郡清川村)
渓流沿いにログコテージ、魚のつかみ取り池、屋根付きBBQハウスまでそろう“川のテーマパーク”。浅瀬は水深20 cmほどで三歳児でも安心。夏限定の流しそうめんやピザ窯体験は大人も童心に返る人気イベントで、焼きたて生地に地元バジルと清流の風が香りを添えます。夜はケミカルライトを流す“光る水遊び”が子どもたちに大好評。
緑の休暇村 青根キャンプ場(相模原市)
道志川と中津川が合流する中州に300近いサイトが点在。宮ヶ瀬ダムの放流サイレンが鳴ったら川から上がる安全ルールが徹底され、「増水しても大きな事故ゼロ」を更新中。場内の露天風呂「いやしの湯」では、湯煙越しに赤い夕焼けと山影を眺めながら一日の疲れをゆっくりリセットできます。ダッチオーブンのレンタルが始まり、渓流サーモンのハーブ焼きを試すキャンパーが続出。
足柄森林公園 丸太の森(南足柄市)
東京ドーム5個分の森に木製アスレチックと浅い沢が走り、水温は真夏でも20 ℃前後。沢沿いを流れる風が樹皮の匂いを運び、リスが枝を駆ける音がBGM。森の冷蔵庫と呼びたくなるほどヒンヤリした空気は、エアコンの涼しさとは別物です。沢上のウッドデッキでハンモックに揺られ読書する贅沢はここだけ。
青野原 野呂ロッジキャンプ場(相模原市)
かつて飛び込みスポットとして人気でしたが岩場崩落を受け2025年から飛び込みは禁止。それでも澄んだ流れと広い芝生サイトは快適そのもの。夜、焚き火台越しに蛍がふわりと飛ぶ光景は、火のパチパチという音と淡い光が共鳴し、言葉を失うほど幻想的です。朝は川靄が立ち、コーヒーの湯気と重なるとまるで水墨画。
人混みを避けて遊べる!神奈川県内の穴場川遊びスポット6選
中津川河川敷(愛川町)
幅80 mの川原に小石が敷き詰められ、細い瀬が何本も走る。川底が透けて見えるので子どもはカニ探しに夢中、大人はチェアで読書。日が傾く頃、ヒグラシの声が谷に響き、水面が夕日に染まる一瞬は胸がじんわり温かい。
チェックリスト
- ファミリー向け: ★★★★☆(幼児は水深20 cmゾーン推奨)
- 流速: 緩やか。膝下までが安全域
- 岩場/底質: 5~30 mmの小石。サンダルよりアクアシューズ向き
- 泳ぐ可否: 浅瀬中心で水浴び◎、本格遊泳✕
- ペット: リード必須。河川敷に簡易リード杭あり
- 駐車場: 河川敷P約70台(普通車500円/日)
相模川自然の村公園(相模原市)
池と小川を人工的に整えた親水施設。くるぶし程度の浅瀬が続き、水遊びデビューに最適。芝生広場でポップアップテントを張り、スイカを川水で冷やしてかぶりつけば、遠くでカワセミが青い閃光を残して飛び去ります。
チェックリスト
- ファミリー向け: ★★★★★(水深10~20 cm)
- 流速: ほぼ静水
- 岩場/底質: 整備済み砂利+人工護岸
- 泳ぐ可否: 足ちゃぷちゃぷ限定
- ペット: 芝生はリード1.5 m以内、川辺は足洗い場利用可
- 駐車場: 180台・無料
帷子川親水緑道(横浜市)
駅徒歩5分とは思えない涼やかさ。早朝にはカワセミ、昼下がりにはカルガモ親子が列になって泳ぐ平和な風景。水面に浮かぶ雲を眺めていると時間がほどけ、つい次の電車を見送ってしまいます。
チェックリスト
- ファミリー向け: ★★★☆☆(幼児OKだが滑りやすい苔に注意)
- 流速: 0.1〜0.2 m/s
- 底質: コンクリ+苔。マリンシューズ推奨
- 泳ぐ可否: 水深20 cm以下、水遊びのみ
- ペット: 常時リード必須/幅1.2 m以下
- 駐車場: 近隣コインP多数(上限1,200円/日)
谷太郎川親水公園(厚木市)
丹沢山系を源とする澄んだ流れ。河原に立つと杉の香りが鼻をくすぐり、石をめくるとサワガニが逃げ出す。子どもたちの笑い声が森にこだまし、親はその背中をカメラに収める――そんな休日がここにはあります。
チェックリスト
・ファミリー向け: ★★★☆☆(小学生以上向け)
・流速: 場所により0.3〜0.5 m/s
・底質: 丸石~拳大の岩。サンダル不可
・泳ぐ可否: 胸下まで可、ライフジャケット推奨
・ペット: リード要。犬用飛び石ゾーンあり
・駐車場: 100台・700円/日
札掛森の家下・早戸川(清川村)
知る人ぞ知る渓流の好ポイント。橋の下にできる天然プールは大人の腰ほどの深さで、シュノーケルを着ければヤマメやカジカがのんびり漂う姿が見られます。夏でも水温16 ℃前後、10分浸かれば肌がピリッと引き締まり、上がった後の太陽がまるで毛布。
チェックリスト
- 冒険度: ★★★★☆(中上級者向け)
- 流速: 0.5 m/s前後。足首を取られやすい
- 底質: 岩盤+苔。フェルトスパイク推奨
- 泳ぐ可否: 深場1.2 m、飛び込み禁止
- ペット: リード必須、足場不安定につき小型犬非推奨
- 駐車場: 県道70号沿い無料P18台
神奈川県立秦野戸川公園(秦野市)
透明度の高い水無川が公園を横切り、全長267 mの「風の吊り橋」が頭上を横断。春は桜、秋は紅葉が川面に映え、季節ごとに彩りを変える天然スクリーンは見る人を飽きさせません。
チェックリスト
- ファミリー向け: ★★★★☆
- 流速: 穏やか(0.2 m/s)
- 底質: 小石+護岸コンクリ
- 泳ぐ可否: 徒渉・ちゃぷちゃぷ専用
- ペット: リード着用、吊り橋へは昇降注意
- 駐車場: 第1・第2計400台(普通車520円/回)
ペットも一緒に!犬と楽しめる川遊びスポット
相模三川公園――リードを外せるドッグラン(面積約1,500 m²・柵高1.8 m)と浅瀬のじゃぶじゃぶ池が隣接。ドッグラン外では伸縮リード最大1.5 m以内と定められている。シャワー付き足洗い場完備で、泥んこになった肉球もすぐ洗える。夕方、西日が芝生を黄金色に染める頃は、愛犬の背中のシルエットが一段と写真映え。
田代運動公園(中津川河川敷)――流れが穏やかな支流側へ移動すれば小型犬でも安心。エリア下流に30 m×15 mの“オフリード帯”が設けられており、見通しの良い土手が天然フェンス代わりになる。条例でリード長は2 m以内とされ、オフリード帯以外では必携。地元厚木のシロコロホルモンを七輪で焼き、犬たちは川でクールダウン。肉の匂いと水しぶきが混ざる“夏の犬キャン”は、言葉にできない幸福感を運ぶ。
地域別まとめ|神奈川県の川遊びスポット早見マップ
陣ケ下渓谷公園(横浜):市街地の地下水が湧く小渓谷。真夏でも水温17 ℃前後。パン屋のバゲットを片手に足湯ならぬ“足冷えカフェ”。
ユーシン渓谷(足柄上郡):青い川面で有名。ただし落石により林道が通行止め区間あり。最新情報確認必須。
くずは峡谷・不動尻渓谷(秦野・厚木):夕暮れにはホタルが舞い、川音と虫の声が重なる天然サウンドスケープ。
早川渓谷(箱根):箱根湯本駅から徒歩20分。温泉まんじゅうを川水でキュッと冷やして頬張る“夏のご褒美”。
宿泊OK!川遊び+キャンプが楽しめる人気スポット4選
1. 青根キャンプ場
川遊びのほか、天然温泉も楽しめる人気のスポット。広大な敷地にはテントサイトやバンガローがあり、清流での水遊びや釣りに適した環境が整っています。家族連れのキャンパーにも安心の設備が充実しています。
特徴:
- 川遊び:道志川沿いの広大な敷地で、清流での水遊びや小魚探しが楽しめます。夏は川遊び客でにぎわいます。
- 温泉併設:「いやしの湯」が隣接しており、キャンプ後の入浴と食事が便利です。敷地内から歩いてアクセス可能です。
- 設備:青根キャンプ場150のテントサイト、47棟のバンガローを備え、ファミリーにも安心。予約不要なフリーサイトも多数。
- おすすめ:自然に囲まれた環境で、川の水質が良く、暑い日に特に評判が高いスポットです。温泉好きにはたまらないロケーションです!
2. 新戸キャンプ場
川辺のサイトで焚き火を囲みながら、ゆったりとした時間を堪能できます。
特徴:
- 直火について:薪や炭を地面に直接置く「直火」は禁止されており、焚き火台の使用が必要です。
- 川遊び:道志川の清流沿いで、浅瀬が多く小さな子どもでも安心して遊べます。
- おすすめポイント: 川遊びを楽しみながら、アウトドアの醍醐味を感じられる自由度の高いキャンプ場。初心者から上級者まで幅広く支持されています。
- 注意点:入口や場内の道幅が狭く、車中泊利用時の待機についての案内もあるため、車種の選定に注意が必要。
3. 神之川キャンプ場
川遊びを通じて「魚との触れ合い」を楽しめるスポット。豊富な魚影のおかげで、釣り好きのキャンパーたちにも好評です。
特徴:
- 川遊びと釣り:清流で泳ぐ魚たちを間近で観察でき、場内でニジマス・ヤマメ・イワナ釣り、掴み取り体験が可能。清流沿いで子どもから大人まで楽しめます。
- 自然との一体感:川沿いに広がる木陰のエリアで快適に過ごせます。
- アクセス:道志川沿いで車でのアクセスも比較的良く、日帰り利用も可能。
- おすすめポイント: お子さまと一緒に魚釣りを楽しんだり、大自然にどっぷりと浸るのに最適な場所。神奈川県屈指の川遊びスポットとして根強い人気です。
4. 桐花園キャンプ場
ログキャビンや手ぶらキャンプが可能な、施設がしっかり整備されたファミリー向け滞在型キャンプ場。リラックスしながら川遊びを楽しみたい方に最適です。
特徴:
- 川遊び:敷地内に掴み取り専用の放流場があり、清流で安心して子どもが遊べます。
- 宿泊施設:ログキャビン・バンガロー・キャビンが整備され、初心者や家族連れでも快適に滞在できます。
- 体験プログラム:季節により、にじます掴み取りや手作りうどん教室などの体験イベントも実施。
- おすすめポイント: テント泊に不慣れな人、初めて家族で川遊びに挑戦する人に最適。手厚い設備と快適な滞在プランが魅力!
川遊びのマナーと注意点
水は見た目以上に力があります。目安は「膝下でも流速50 cm/秒を超えたら横断しない」。肌に当たる水圧が強いと感じたら即退避。ライフジャケットは大人こそ着用し、子どもに背中で示しましょう。熱中症対策には凍らせたスポーツドリンクをタオルで巻き首筋に当てると内側から冷えます。炭や食べ残しは必ず持ち帰り、石で組んだカマドは解体し原状復帰――川を次の人に“そのまま手渡す”のが最低限の礼儀。川遊び中には、着替えや厚手タオルを用意。秋口や雨上がりは水温が急激に下がるため防寒具も忘れずに。ペットの抜け毛は水路に溜まりやすいので、遊び終わったらブラッシング用の袋に集め持ち帰るとスマートです。
川遊びがもっと快適に!おすすめポータブル電源2選
長時間の川辺ステイでは、スマホ動画撮影や冷蔵庫のコンプレッサーが意外に電力を消費します。そこで頼りになるのがBLUETTI AORAシリーズ。
AORA 30 V2 ポータブル電源(288 Wh|600 W)
AORA 30 V2は手軽に持ち運べるコンパクト設計でありながら、日帰り釣行や小規模な電力ニーズに充分対応できる性能があります。片手で持てる3 kg台。iPhone12台を満充電しても余力があり、USB扇風機×2+LEDランタンを5時間回し続けられます。日帰り派の“とりあえず一台”に最適。
AORA 100 V2 ポータブル電源(1,024 Wh|1,800 W)
AORA 100 V2は多用途の電力が必要なシチュエーション向けのパワフルなモデル。1 kWh超えの大容量。60 Wのミニ冷蔵庫を13時間冷やしてもびくともしません。夜の河原シネマ用に100 Wプロジェクターを4時間上映しつつ、カメラとドローンも同時充電できる頼もしさ。リン酸鉄リチウム採用で充放電3,000回以上、非常時の“家庭用母艦”としても心強い相棒です。
まとめ
渓谷のキリッとした冷気から穏やかな河川敷まで、神奈川県の川遊びは驚くほど多彩。今回紹介したスポットなら初心者もベテランも「自分にちょうどいい水辺」が見つかります。安全とマナーを守りながら、自分と仲間に合った場所を選べば、汗ばむ季節がいっそう好きになるはず。
帰り道、ぜひ立ち寄ってほしいのが 山北町「洒水の滝湧水ジェラート」。名水百選に選ばれた伏流水で練ったミルクジェラートは、遊び疲れた体に染み入る甘さ。滝の轟音とともに味わえば、冷たい川の感触がもう一度よみがえります。
冷たい流れに足をひたし、風に揺れる木漏れ日を眺めながら、今年の夏の一頁を川辺で書き足してください。