深夜電力はなぜ廃止?深夜電力のデメリットと新規受付終了のワケ

「深夜電力」という言葉を聞いたことがありますか?

・深夜電力を使うと電気料金が安くなるらしい

・深夜電力はお得らしい

そんなイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実は、現在では各電力会社では「深夜電力」が廃止、あるいは新規受付が終了されています。

なぜお得なのに廃止の方向へ進んだのかを含め、深夜電力について解説します。

深夜電力とは

深夜電力とは

画像出典:pixabay.com

「深夜電力」とは、深夜の特定の時間帯の電力利用に対して、日中よりも割安な料金を設定した料金プランです。

深夜電力はなぜ安い?

人の活動の多くは日中に集中しています。多くの人が活動する日中は電気の使用量は多く、あまり活動する人が多くない深夜には電気使用量は少なくなります。

電力各社の発電能力は、電気を多く使用する日中を基準にしているため、深夜には発電能力に余力が生まれます。そこで、深夜の発電能力の余力を使って発電した電気を使ってもらって、日中の電気利用を少なくできれば、1日を通じて余裕を持った発電が可能になります。

つまり深夜電力は、深夜の発電所の余力を有効に活用するとともに、日中の電力需給に余裕を持たせるための料金プランだと言えます。

深夜の電気利用料金を割安に提供できるのは、需要と供給の原則で、需要の少ない深夜の方が、需要の多い日中よりも仕入単価が割安なためです。

深夜電力が適用される時間帯

深夜電力で電気料金が安くなる時間帯は、電力各社で若干異なりますが、概ね22時~翌8時までとなっています。

東京電力の「夜とくプラン(夜トク8)」、関西電力の「はぴeタイムR」は、23時~翌7時(8時間)に適用されますし、東京電力の「夜トク12」は21時~翌9時(12時間)、中部電力の「スマートライフプラン」、北陸電力の「くつろぎナイト12」では20時から翌8時(12時間)に適用されます。

深夜電力と夜間電力

深夜電力に似た言葉に「夜間電力」があります。

深夜電力も夜間電力も所定の時間帯の電気料金が割安に設定されている点は同じですが、深夜電力が「蓄熱機器」や「温水器」などの特定の機器への利用に限定されているのに対して、夜間電力は電気の利用機器に制限はありません。

深夜電力の種類

一口に深夜電力と言っても、電力会社によって工夫を凝らした多様なプランが設定されています。

  • 深夜電力A

家庭でキッチンや洗面所などで小型電気温水器を使っている家庭を対象にしています。

  • 深夜電力B

家庭で、大きめの電気温水器やエコキュートなどを使用する家庭を対象にしています。エコキュートなど深夜帯に電力利用が多めの家庭に適しています。

  • 深夜電力C

家庭で、大きめの電気温水器やエコキュート、さらに床暖房などを利用していて、深夜電力Bよりも電気使用量が多い家庭を対象にしたプランです。

深夜電力のメリットとデメリット

深夜電力には、料金が割安な深夜の時間帯に温水器やエコキュートなどの特定の機器を動作させることで電気料金を抑制するメリットがある一方で、特定の機器以外には恩恵がなく、さらに多くの活動が行われる日中の電気料金が割高となる点はデメリットです。

深夜電力の新規加入受付が終了した理由

深夜電力の新規加入受付が終了した理由

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電力各社は「深夜電力」を廃止、あるいは新規受付を停止しています。また、夜間電力についても料金の値上げが行われています。

温水器やエコキュート等を利用する際には有用と思われる深夜電力を廃止するのはなぜなのでしょうか。

夜間の電力需要が増加

前項でも述べたように、深夜電力の電気料金が割安にできたのは、電力各社が電力需要の少ない深夜の時間帯に割安な仕入単価で電力を購入し、それを深夜電力の料金に反映させていたためです。

しかし、近年では、夜間蓄熱機器や電気温水器、エコキュートなどの普及が進んだことで深夜時間帯の電力使用量が増加しているため、深夜と言えども仕入単価は以前ほど割安ではなくなっているため、必然的に深夜電力の料金を値上げせざるを得ません。

そうなると利用する側もあまり大きなメリットを得られなくなるため、かつてほど深夜電力の「うまみ」はなくなってしまいました。

太陽光発電の普及

2012年に開始となった「FIT制度(※)」や、脱炭素の世界的な時流によって一般家庭でも手軽に電力自給が可能な太陽光発電システムを導入する世帯が増加しました。

※FIT制度…「固定価格買取制度」のこと。再生可能エネルギー(太陽光、風力など)で発電した電気を電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が保障する制度

太陽光によって発電した電力を家庭内で利用すれば、電気を電力会社から購入する電力量(=電気料金)を減少させることが可能となり、割安とは言え電力会社に料金を支払う深夜電力の存在価値を減じてしまいました。

日中に太陽光によって発電した電力を蓄電池に貯めておき、夜間も含め好きな時に使うことができれば、わざわざ電力会社から電気を購入する必要はないというわけです。

現在契約できる深夜電力

現在も新規契約可能な深夜電力は、関西電力の「深夜電力A」「深夜電力B」のみです。

いずれも適用時間帯は23時~翌7時で、「深夜電力A」は小型電気温水器など設備の小さな家庭向け、「深夜電力B」は大きめの電気温水器やエコキュートなどを使用する家庭向けです。

新規加入受付を終了した深夜電力

以下の深夜電力プランは、新規加入受付が終了しています。

■北海道電力…深夜電力A・深夜電力B・深夜電力C・深夜電力D

■東北電力…深夜電力A・深夜電力B・深夜電力C

■東京電力…深夜電力A・深夜電力B

■中部電力…低圧深夜電力・わくわくホット(沸増型電気温水器契約)・第2深夜電力

■北陸電力…深夜電力A・深夜電力B・深夜電力C・深夜電力D

■関西電力…第2深夜電力

■中国電力…深夜電力A・深夜電力B・第2深夜電力

■四国電力…深夜電力A・深夜電力B・第2深夜電力

■九州電力…深夜電力A・深夜電力B・第2深夜電力

■沖縄電力…深夜電力A・深夜電力B

関西電力を除いてすべての電力会社の深夜電力プランが新規受付終了となっています。

新規受付は終了していますが、すでに契約済みの場合はそのまま利用を継続することができます。ただし今後、深夜電力プランの廃止もあり得るかもしれません。

太陽光発電による電力自給のすすめ

太陽光発電による電力自給のすすめ

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自宅の屋根などにソーラーパネルを設置し太陽光発電によって生み出すことを「電力自給」といいます。

太陽光発電によって自給した電力は、電力会社から購入した電気ではないので料金がかかりません。自宅の電気製品にしようしたり、売電することによって電力会社に支払う電気料金の全て、あるいは一部を代替することが可能です。

電力自給は国のエネルギー安全保障にも影響する

電力を自給することは、家庭単位で考えれば電気料金の抑制という点で「節電」「節約」に効果がありますが、実は、多くの家庭で電力自給に取り組むことで、国のエネルギー安全保障という大きな視点においても好影響があります。

我が国の発電は化石燃料への依存度が高いため、大量の石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を輸入する必要がありますが、ウクライナやイスラエルなどでの紛争や、円安などの影響によって思うように燃料の輸入ができなかったり、多額のコストがかかってしまう場合があります。

多くの過程で再生可能エネルギーによる自家発電による電力自給が行われれば、電力会社が化石燃料を使う発電量を減らすことに繋がり、引いてはエネルギーの安定供給に繋がるのです。

脱炭素化にも有効な対策になり得る

家庭での脱炭素化には幾つかの有効な取り組みがあります。

■リフォームによる省エネ化

住宅や建築物の断熱は省エネとして高い効果が見込まれます。窓や壁を断熱リフォームすることで冷暖房効果を向上させ、その分、無駄なエネルギー消費を抑制し、脱炭素社会に貢献します。また、屋根などに太陽光発電パネルを設置し自家発電することで電力消費を抑えることは脱炭素化に有効です。

■電動車の導入

わが国では、2035年までに乗用車の新車販売の100%を電気自動車とする目標を掲げています。電気自動車に使用する電力は再生可能エネルギーから生み出すことで脱炭素を目指すことができます。

ポータブル電源による手軽な電力自給

ここまで見てきたように家庭での電力自給は、深夜電力を利用せずとも省エネ・脱炭素に貢献する方法として非常に有効です。

多くの世帯が電力自給に取り組むことで、国全体としてのエネルギー事情を改善できる可能性さえあります。

ただ、太陽光発電システムの導入は決して低コストではないだけに、節電できたコストで太陽光発電システムの導入コストをペイするのかを考えると、なかなか導入に踏み切れないケースもあり得ます。

しかし、実はもっと低コストで手軽に電力自給に取り組む方法があります。それはポータブル型の蓄電池とソーラーパネルによる太陽光発電・充電です。

どんなに小さな電力量であっても、自家発電で得た電力量の分だけ電力会社から購入する電気量は少なくすることができるのです。

例えば、容量2,000Whクラスのポータブル電源と、350Wのソーラーパネルであれば、1日に約2kwの電力を自給することが可能です(350W/時発電で日照時間5.5時間の場合)。

1日2kwの自家発電で電力会社からの購入を減らすことができれば、月間に60kw、年間に720kwの節電になります。1kwあたりの電気料金を27円とした場合の節電額は、月間1,620円、年間で19,440円になります。

2,000Whクラスのポータブル電源の相場は約20万円、400Wクラスのソーラーパネルの相場は10万円ほどです。合わせて30万円ほどで、年間に2万円ほどの電気料金節減が可能で、脱炭素への貢献と、災害等での停電時の電力を賄う術を手に入れることができます。

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深夜電力まとめ

今回は深夜電力について見てきました。

現時点ではごく一部の電力会社のみが新規契約可能となっていますが、多くの深夜電力の料金プランは新規受付を終了しています。

まだ深夜の電気消費量が少ない時期には有効だった深夜電力の仕組みですが、夜間の電気使用量が増加し、家庭での太陽光発電システムによる電力自給の仕組みが普及するに従って、その役割を終えた印象です。

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